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「ピアスを開けるようになったのはそこら辺からだったと思う」
開けていたのに大した意味はない。
寒いと思ったら無意識に開けていた。
初めは家にあった安全ピン。それからニードルに代わっていった。
地元に戻って1ヵ月でその飾りは10個以上になっていた。
「開けた直後、開けて2・3日は不思議と寒くなかった」
"俺"を少なからず実感出来て心が満たされた。
喧嘩は後からするようになるんだけど、喧嘩も似たようなもんだった。
寒さを感じたら気が付けばしてた。そんで喧嘩したその日はピアス同様寒く無くて。
自分を確かめるように、"生きている"ことを確認するかのように。
それらの行為に体が依存していった。
「…いつだったか忘れたが、たまたま開いていた屋上でサボっていたら愁と出会った」
"優等生"だった俺がたった2ヶ月で地元に戻った。
そんな美味しいネタ愁が逃す訳もなくて、俺はあいつの"玩具"として目を付けられた。
「あいつは俺を落とす為にレイプした。『自分が1番不幸だとでも言いたい俺』…が気に食わなかったらしい」
愁のことをまだ何も知らなかった俺は、標的にされた意味が分からなった。
だって、自分が1番不幸だとか、そう言うこと俺は思って無かったし、たったそれだけでって感じだった。
でも愁にとって、俺は恵まれた家庭で生まれ不自由なく育ってきた人間でしかなく。確かに、俺は辛いことばかりだったけど生活面では苦無く過ごせれたと思う。
愁からして見ればそれなのに周りが見ればそう言う顔をしている俺が許せなかったんだろう。
俺はその時、自分しか見れていなかった。それが表情に出ていたのかもしれない。
「男に掘られるなんて屈辱的で、狂いそうになった」
それは1度だけじゃなくて定期的に、何度も。
「…だけどさ、その行為に心が満たされる自分がいたのも確かなんだ」
愁に犯されてる時だけは、俺の傍に人の温もりがあった。
その温もりは寒さを紛らわせてくれて、行為を重ねる度にそれははっきりしたものになってきて、気付いた時には戻れない所まで落ちてしまってた。
このレイプしてされる関係が終わって、今みたいな関係になるきっかけになったのは、出会った時同様偶々開いていた屋上に俺がいた時だった。
「その日は凄ぇ寒かった。まだ夏で、ニュースで見た気温は暑い位だったのに」
その寒さを紛らす為に、何時ものように"無意識"に持っていたニードルを体に貫いた。
それを丁度愁に見られた。
愁は最初不自然な場所から血が流れる光景に驚いたような顔をしたけど直ぐにいつもの様に笑みを浮かべて「学校で開けるなんて勇気あるねぇ優等生?」って感じに俺を煽ってきた。
だけど俺が不安定なのを感じ取ったのだろう。
"似たような傷"を持っているから、その状況がただピアスを開けているだけではないと、直感で分かったのだろう。
「その時初めて愁は"人間らしい"表情を見せた。『大丈夫か?』って俺の背を撫でて、落ち着くまでずっと傍にいてくれた」
それが"遊び"でやっていることじゃないんだってこと位俺にも理解出来て、仲が良いとは言い難かったが、そういう目を向けてくれたのは愁が初めてで、それもあって自然と心を開いていった。
それから愁は俺で遊ぶことはなくなった。
寧ろ俺を気にかけてくれるようになって、ずっと傍にいて俺に"温もり"をくれた。
俺をターゲットにしたことを謝られたこともあった。
確かに最初は許せない部分があったけど、その時にはもうそんなこと気にしなくなっていた。俺に至っては感謝にも近いものを抱いていた位だ。
愁が俺を標的にしていなければ、俺は寒さで飢えたままだったと思うから。
第三者からして見れば、自分からしておいて、あんなことをされたのにと、その互いの180度違う心の変化は矛盾だらけで理解できないものだと思う。
これは俺等にしかきっと分からない。"傷"を負った俺等しか。
始まりの関係は最悪だったけど、愁が初めて、"俺"を見てくれた人であることに変わりなく、いつの間にか愁は俺の1番の理解者になってくれていた。
「それはきっと愁も同じで、俺達は互いに依存し合った」
"温もり"が欲しかったから。
"心"を満たされたかったから。
"居場所"が欲しかったから。
ー"生きている"と実感したかったからー
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