アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
、
-
「その人は…兄貴はこうも言ってくれた」
「俺と一緒に住まないか?そりゃあ男の1人暮らしで2人で暮らすには少し狭いけど、それでも良いなら俺はもう一度お前と家族になりたい」…って。
素直に嬉しかった。
家族って思える存在がいない俺にとって、例え全く繋がりが無くて父に"失敗例"として扱われていた兄であっても。家族になりたいとこんな俺に歩み寄ってくれたことが。
だけどいきなりのこと過ぎて、俺はそれに頷けなかった。
はいそうですか、って言うには事が大き過ぎる。
それに迷惑なんじゃないのか。10年以上前に別れた弟、ほぼ他人同然のやつと一緒に住むなんて。
住みたいと言ってくれたとは言え、実際住んでみたらシェアハウスとそう変わらないだろう。
そんな、色んな思いが混ざり合って、俺が返事を出来ないでいると兄貴は苦笑した。「一気に言う様なことじゃなかったな」、と。
「兄貴は俺の答えを待ってくれた。いつでも良いからその答えを聞かせてくれって」
そう言った上でもう1度俺に自分の気持ちを俺に伝えた。
「最初はぎこちなくなるかもしれない。けれど俺は本心からお前の家族になって支えてやりたいと思った。この気持ちに嘘は無い。お前が弟だと思う前と同じで、俺はお前の居場所になってやりたいんだ」…って俺さえ良ければ一緒に住みたいって自分の意思を。
その後、迷惑だとかそう言うこと考えないで俺の素直な気持ちを聞かせて欲しいと言われたが、結局この日の内に答えを出すことは出来ず、次の日自分ではどうしようも出来ない案件を愁に相談した。
俺はどうしたら良いのか。
他人同然の兄貴に甘えても良いのか。
"家族"になっても良いのか。
「愁は考える暇なく答えてくれた。『家族になりたいならなれば良い。向こうが言ってきたんだ、気を使う必要はない』って」
俺の意見を尊重しようとしてくれているってことは、向こうは迷惑だなんて微塵も思って無い証拠。だから最終的なものは俺次第。
「良かったじゃん。俺は昴流がそれで笑ってくれるんなら嬉しいよ」って笑う愁の、それらの言葉が俺の背中を押してくれた。
愁がそう言ってくれなければ今俺が兄貴と住んでいることは無かっただろう。
それから、また2週間。
「考えて、考えて考えた結果、兄貴に俺はそれの答えを出して、一緒に住むようになった」
兄貴と住み始めてからは寒いと思う日は減っていった。
どうしようもなく不安になる日も段々と少なくなっていった。
初めての、『家族』の温もりは"生きている"と実感するには十分過ぎるものだった。
例え"失敗例"の兄でも、欲しかった温もりをくれるその存在は、俺にとっては"1番"の兄貴。
ちょっとお馬鹿な所があって、飯は俺と住む前は三食ほぼカップ麺、家事も必要最低限しかしないずぼら。アル中で、腹黒い。それから車はアメリカ車で派手で左は危なっかしいから止めろって言ってんのに聞かないし、運転のスピードはグレーゾーンでそして雑。こっちがヒヤヒヤする。
けれど、真面目で実は人のことを良く見ている誰よりも優しい兄貴。
そんな兄貴は、兄貴のことを誰が何と言おうと、誰よりも上に立っている自慢の兄貴だ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
71 / 1113