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「…大雑把…つーか色々省いたとこもあるけどこんな感じ」
一通りの事を言い終わって、俺はひと息ついて椿の方をちらっと見て、彼が動くのを待った。
だけど椿が動きを見せることはなく、ただ静かな時が過ぎていくだけ。
その静かな空間が嫌で俺は唇を開いた。
何でも良いから言って欲しかった。沈黙は怖かった。
「笑うか?こん"だけ"のことでこうなったのかって。…それとも"重たい"と思ったか?やっぱ俺のことなんて好きじゃなーーー」
「好きだよ。お前への気持ちは変わらない」
俺の言葉を遮るように、優しい声で、表情で、椿はそう言った。
話す時、1度も離れることのなかった腕が離れ、俺の頭を撫でる。
俺が言ったことを頑張ったなって褒めるみたいに。
「色々と考えてしまってな。だからお前梅雨のときはあんなに厚着だったのかとか、だから無意識に"ああいう"事をしてしまうのか…とかな。まぁ、そんなことを色々と。不安にさせた?」
「…別に」
「っふふ、ごめんな?」
そっぽを向いたら少しだけ困ったように笑って。ぎゅうう、と力強くだた抱き締め直して、大好き、大好きと愛の言葉を囁く。
「昴流はこうやって家族に触れて欲しかったんだな。それを当時のお前は褒められることでしか得られる術を知らなくて。頑張ったな」
「…う、ん」
「良い子。昴流超良い子。偉い偉い」
親の代わりに言ってくれているんだろうか。
否、でも「偉い偉い」はどうかと思う。
小学生なら喜んでいただろうが、今は高校生で、もう喜べる年ではない。
触れて欲しかった…か。そう、だったのかもしれない。
褒められる、とか怒られるだとか。父が何も言わなくても良い。けれど、行動で示して欲しかったのかもしれない。
俺が家族の一員なんだって。
こうやって頭を撫でてもらえるだけでも俺は十分で、頑張れていたと思う。
「なあ、昴流。俺がお前を幸せにしてあげる。…愛を胸焼けする位にあげてあげる。"暑い"って思う位に心を満たしてあげる。お兄さん以上の"温もり"をお前にあげる」
「…そうかよ」
「俺が、お前が今まで欲しかった分も触れて、愛してあげる」
こいつが言えば不可能なことには聞こえないのが凄い。結構大層なことを言っている筈なのに。
こんな俺を好きだと言ってくれる椿なら、本当に出来そうだな、って思えてしまう。
「来年の梅雨は俺がいるから逆に暑いかもな?」
「…っふふ…、期待しとく」
本当にこいつは兄貴と住むようになっても満たされなかった"何か"を満たしてくれるのかもしれない。
もしかしたら本当にお前となら兄貴と住む前の事を思い出しても寒いと感じなくなるのかもしれない。
お前となら、"椿涼"となら"本当"の意味で俺は、"俺"が分かることが出来るかもしれない。
お前の言葉を聞いていると俺は変われるような、そんな気がしてきた。
「昴流笑った。もう超かぁわいいもう1回。スマイル頂戴」
「…はぁ…?」
嗚呼、でもやっぱ。こう言う所は理解するのには時間がかかりそうだ。
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