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そうして10分。良い感じに焦げ目が付いたクッキーを皿に移し替えていく。
冷ましていると横から手が伸び愁の口の中へ。
「さっすがルウちゃん。ちょー美味しい」
まだ焼きたてのクッキーを美味しそうに頬張る愁。
俺も一応味見しようかと熱いそれを1つ摘まんだ。
「…砂糖少し多いような気もする」
思ったよりも甘くはなかったが、市販のよりも甘い。
砂糖を少なくして、バターの味を生かしても良い気がした。
だが、愁はこの位がお菓子なんだから丁度良いと言う。
そう言うものだろうか。
うちのクラスの出し物の食べ物を買うとしたら甘いのが好きな奴位だろうし、甘い位が良いのだろうか?
そう愁が言うのなら俺は良いが、やはり、バターを生かしたものを作ってみたい気もする。
「私の分は無いんですか?」
「…食べたいなら食べたら良いだろ」
後ろから椿にそう聞かれたので思ったことをそのまま口に出した。
小さい型で抜いたから結構数あるし、欲しいだけ食べたら良い。
ちょっと食べた所で無くなる量ではない。
そんな俺の返事を聞いて「赤点」と俺と隣にいる愁にだけ聞こえる声でボソッと椿が呟く。
何が赤点なんだときょとんとしていると、椿は俺の耳に顔を近づけてきて、「後で補習だな?」と熱の籠もった声で囁いた。
それにまた心臓が跳ねる。今度は違う意味で。
数日前、嫌な程に聞かされたその声。
その声で愛を囁き、泣き、喘ぐ俺を容赦なく責め立てたその数日前の情事。
それを思い出してぶるりと体が震えた。
「…ん、美味。クッキーはこれで良いんじゃないですか?」
椿の声はいつまでたっても耳に残ってて、俺の中でその存在が薄まっていくどころか濃くなっていき、どっど、と自分でも聞こえる位に速く、そして力強く鼓動する心臓。
その隣で椿は何も無かった様にクッキーを口に入れて、女子にクッキーの入った皿を渡した。
女子達はそれを食べると美味しいと一言。
そりゃあメニュー見ながらやったし美味いのは当たり前だけど作ったものに良い意味の感想を言ってもらえるのは普通に嬉しい。
最近まではそういうこと言ってくれる人が身近にいなかったから余計に。
この時間中、俺が何もしてこず、話し掛けても怒りはしなかったからか最初よりは女子の俺への警戒心は無くなってた。
それでも少し声は震えていたが俺に1人がクッキーの方を当日も頼めるかと聞いてきたのでそれに頷いた。
作り方はもう覚えたし、思ってたよりも簡単だったから。
そこまで作業する時間は無かったから良いかなあって。
バイトの合間にいろんな味作ってみるかな。
味が1つだけってのは少し寂しい気がするからもう1種類位は欲しい。
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