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「ひゅーコウイケメン」
「お前も仕事しろ」
「はぁい」
ぞろぞろと人が入ってくる。吏さんは俺の方に来て俺を拘束していた奴等を蹴散らして、俺を「大丈夫だ」と言って抱き締めてくれた。
「はぁ…?何だよあんた等。…嗚呼、確かこのビッチと一緒にいた奴だっけ?」
「…あー…順序間違えたなこれ」
「うん、俺もそう思った」
「…おい無視してんじゃねー……」
瞬間、メキ、と男の声を遮るように骨が軋む音がし鮮血が放物線を描く。
それに頭を抱える幸仁さんと吏さん。
男の目の前に立っているのは、兄貴。
「よーく聞こえなかったんだが俺が分かるように、はっきりと。誰が何だって言ってみろよ」
俺に向けたことの無い氷のような冷たい声。背を向けられて顔は見えないが、その声から察するに俺が知っている兄貴の顔とは全く別のものなんだろう。
「あー…リュウ。気持ちは分かる。分かるから落ち着け。昴流もいるんだぞ」
「あ゛?…あー…ッチ…」
ーガァンッ…ー
兄貴が思いっ切り机を蹴って、椅子と共にそれが倒れる。
初めて見る、兄貴が切れてる所。そんな兄貴に戸惑いを隠せずおどおどとしていると、兄貴が俺の方に振り向き、俺の前で俺と同じ高さになるまでに腰を屈めた。
そこにはもう怖い兄貴はいなくて、いつもの優しい兄貴の顔。
「ごめんな。俺がお前の代わりに行きゃあ良かった。…頑張ったな昴流」
「あ、にき…っ、おれ…」
抱き締め、背を叩く兄貴に腕を回して、肩に黒い生地の服を更に色濃くさせていく。
「…うわ、昴流ちゃん効果凄」
「俺等はこっちだな。…マジで無駄な仕事増やすなっつーの…」
「本当。昴流ちゃんと愁ちゃんの仮装楽しみにして来てたのにぃ…。はーいお前等逃げんなよー。逃げても顔ばっちり覚えてっから時間の無駄だろうけどねー」
完全に空気と化し逃げようと教室の出入り口の方に忍び足で向かっているそいつ等に、吏さんが手帳を見せた。
それを意味することを外国人でも無いのだから理解したそいつ等は逃げることを諦めた。
幸仁さんは兄貴が殴った奴を取り押さえて。
言い忘れてたけど吏さんと幸仁さんの職業は警察官。
幸仁さんは納得出来るけど吏さんは意外だ。
…偏見と言う訳では…ない訳ではない。
「…あ…えと…愁は」
待機していた筈の3人がここにいるってことは愁は見つかったんだろうか。
「…嗚呼、あいつは他校の奴に絡まれてるとこをスグルが捕まえた」
「そ、う…」
良かった。愁に何も無くて。
「それで昴流にも連絡入れたんだけど出ないから皆で探すことにしてさ。多分もう直ぐで来る。椿先生もーー……」
「涼は、駄目……ッ!」
兄貴の言葉を遮るように声を荒らげる。
まさか俺がそう言うと思っていなかったのか兄貴は目を丸くした。
「何で駄目なんだ」
「…っ、だって…俺…あいつに愛される資格なんか無くて…っ」
"淫乱"な俺には涼に優しい言葉を掛けてもらう資格なんてない。
だから俺は涼に会うことなんて出来ない。会うことなんて許されない。
「…だ、そうですけど」
「愛し足りなかったみたいですね」
「ぁぅ…ッ?!」
兄貴は1度深い溜息を吐くと、背後にいた男に話し掛けた。
それにその人も溜息を零して。
その直後、俺の体が浮いて甘い匂いに包まれる。
会いたくて、だけど会いたくなかった人に、俺は抱き上げられたのだと分かるのは直ぐの出来事である。
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