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「あの人の隣はお前なんかが居て良い場所じゃなーーーんぐ…ッ?!」
「吠えんじゃねぇ」
目の前の少年に対して怒鳴っていた久世の口をその少年…昴流が手で覆った。
そして、その直後久世は恐怖を覚えた。
前髪で微かに見せる左目は、先程と違ったもので例えるならそう。目が合っただけで人を殺せるような…そんな言葉が似合う程に彼の目は冷たいものに変わっていたのだ。
声も今までのだるそうにしているようにも聞こえるおっとりとしたものではなく目と同じ位に冷たいもので、一気にここの空気が冷えていくのを久世は感じた。
何が起爆剤となったのか。
そんなことを今考えている余裕はなく、殺される、そうとさえもこの空間は久世に思わせた。
瞬間、久世の体が軽くなりその直後轟音と共に激痛が走った。
自分が昴流に"飛ばされ"、その反動で机にぶつかったのだと状況が理解できたのは彼の腹に昴流の蹴りが入った後の事である。
「や、め…っ、あぐ…ッ」
「あ?何か、言ったか」
「が、ぁ…ッ」
呼吸をする暇を与えさせない程に、それらは久世の身に降り注いだ。
久世の頭の中は目の前の"狂狼"に対しての恐怖で埋め尽くされ、体はカタカタと震え出す。
高校に入って問題を起こしていないからと昴流を甘く見ていた。
あの"狂狼"は大したことはない、と。
だが、それは間違いで確かに彼は"最恐"の狂狼だった。
あの大袈裟とも言える異名は彼を表す"ぴったり"な名前だったのだ。
「…おい、へばんのはまだ早ぇだろ…?」
そう言って久世の体を無理矢理起こした昴流が久世には狂狼所か"死神"にも見えた。
昴流の拳が振り上げられるのを見て、久世は次に来るであろう痛みに強く瞼を閉じて身を構えた。
が、それは何時までたっても来ることはなく、恐る恐る目を開けると自分の目の前には、昴流同様"最恐"と言われている悪魔の姿があり、その悪魔が昴流の本来自分に来るはずだった拳を受け止めている所であった。
「…愁、邪魔してんじゃねぇよ。退け」
目の前に立った付き合いの長い悪魔を狼は殺気の籠った目で睨んだ。
普通ならその目に怯んでしまうことだろう。
だが、愁は物怖じすることなく昴流が振り解こうとしている手に掴まれた彼の拳をギギギという効果音が合う位の力で握りながら睨み返した。
「頭を冷やせよ昴流」
「俺に命令してんじゃねぇよ」
「命令じゃあない。これはお前の為だ。こいつを病院送りにして後悔すんのはお前、だろ?流星さんと約束したんだろ"高校は卒業する"…ってよ」
「それで?」
「…椿もお前が退学になんのは望んでねぇぞ」
「だから?それが何だってんだよ」
完全に頭に血が上っていて話が出来る状態ではない。
流星との"約束"、そして涼の名前を出せば少しは落ち着いてくれると愁は踏んでいたのだが、全く効果はないらしい。
…逆を言えば、少しでも涼の事を悪く言われるのは昴流にとってそれほどのものだと言うことだ。
ーどうしたもんかなぁー
昴流の拳を強く握りしめたまま、愁はどうやって昴流を落ち着かせるかに考えを巡らす。
出た答えはあまりやりたく無いものだったが、この状況で手段を選んでいる暇はない。
問題が大きくなる前に昴流を止める方法は今、愁にとっては1つしかなかった。
はぁあ、と気乗りしなさそうに深く愁は溜息を吐くと久世を昴流から離れさせていた涼に「おい」と話し掛けた。
「今からやること怒んなよ?」
「は?おいどう言うーー…」
涼が言い終わる前に、その疑問の答えだと言わんばかりに愁は思いっきり昴流の鳩尾に拳をめり込ませた。
"物理的"に"冷静"にさせる。
それが愁が取った最善にして唯一の手段であった。
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