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少しして涼と吉柳がやって来て、その時愁が持ってきた林檎を頬張っていた俺を見て吉柳が「狼城おお」と叫んで抱きついてきた
やめろ、痛い。痛みで死ねそうなくらい痛いから。
「良かった目覚まして…」
深い関係でもないのに俺が目を覚まして安堵する吉柳。それがどれだけ今まで心配してくれていたのかを教えてくれた。
…なんでこいつは俺をこんなにも気にかけてくれるのだろう。
誰にでもそうなのだろうか。
…それはないか。
好き嫌いがない人間なんて居るはずがない。
考えれば考えるほど、吉柳の行動は不思議で、理解しがたいもので、モヤモヤする。
だから俺は聞いてみることにした。
こいつが何を思って俺が理解できない行動をとっているのか。
「…吉柳、んでお前は俺の身を心配する?なぜ俺を助けた?…何を考えてんだ?お前は」
ーお前にとって俺はどういう存在なんだ?ー
俺の問いかけにパチクリと何度か瞬きをすると「何を考えてるのかと言われてもなあ…」と困ったように笑った。
「"友達"」
「はあ?」
「お前と仲良くなりたくて?」
…俺と?
「何の冗談だ」
俺とお前とでは違いすぎるのに、なんで俺なんかと仲良くないたいと思うんだ?普通、思わないだろ。
「そう思ってなかったら何ヵ月も部活勧誘しないよ、俺だって諦めてる」
…話す口実を作りたかったってことか。
と、なると
「え、俺とも"そう"なりたかったの?」
…ってことになる。
愁も未だに吉柳に勧誘されてるから。
「面白い話だけどさあ…俺たちと仲良くなったところで君には"損"しかないでしょ?」
愁の言う通りだ。"不良"と言われ煙たがられてる俺たちと、真逆の明るくてクラスでは"ムードメーカー"的存在で人気のある吉柳が仲良くなったって、吉柳の立場が悪くなることはあっても良くなることはない。
損しかない関係なら、ない方が良い。
「友達は損得でなりたってないじゃん。仲良くなりたいって思うのに理由は要らないだろ?」
仲良くなんのに理由は要らねぇ…か。
無理矢理理由を作るとしても話したいから、とか嫌いじゃないから、とか曖昧なものしかないだろう。
仲良く…ってのは気付いたらなるもんで、そうなる前にとった行動に理由なんてつけることは難しい。
…吉柳が言いたいのはこう言うことだろうと分かってはやれるのだが…、生憎俺はそういう経験がないからピンと来ない。
だがまあ…、友人っつーのはそんくらい緩いのが丁度良いんだろうな
「ん」
「っえ…?」
「宜しく」
仲良くなりたいと言ったのはお前なのに、断られるかと思っていたのかビクビクしている吉柳に手を差し出すと驚いたような顔をされた。
それがどういう意味なのか分かった吉柳は、さっきまでの表情が嘘みたいにパアッと明るくなり、俺の手を握り締めてきた。
「ルウちゃんマジ…?」
「…嗚呼」
こいつの五月蝿いくらいの声も、コロコロ変わる表情も悪くないと思った。それだけだ。
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