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何でこの人がここに?
医者だから患者を診て回るのは普通のことだろうけど、今まで1度も来なかったし、来る医者と言えば大体決まってた。
それにこの人は俺なんかを相手にしてれるほど暇じゃないはずだ。
…というか、落ちこぼれの俺なんかとは関わりたくないはず。
だから来ないと思ってた。
でも実際目の前には居るわけで……。
「…戻ってきましたか。体はどうですか?動いてみて違和感とかは?」
「……っ、」
"医者"として聞いてくる目の前の男。
この人はいつもそうだ。
いつも俺に声をかけてくるとすれば"医者"としてで、"家族"としてじゃない。
…つまり、"患者"でないと話すのも嫌なんだろ?
それなら他のやつに押し付けて自分は別のことすりゃあいいじゃねぇか。
誰も嫌なことを強制してるわけじゃねぇ。俺と違って優秀なアンタが言うことなら誰だって聞いてくれる、気遣ってくれるだろ?
もし、今日がたまたまそうするのが無理だったんだとしても俺が戻ってくるのを待たずにまた診に行くようにいつも来てくれる医者に頼めば良かった。
嫌なら俺を待つ必要も無かった。
「狼城さん?どうされーー」
「彗、別の医者に変わってくれ。勝手な話で悪いが昴流には早かったみたいだ」
兄…桜木彗が無言の俺に近付いて来るのを涼が止め、かわりに涼が俺に歩み寄って背を撫でて「大丈夫だ」と物心がついて間もない子供をあやすように言い聞かせた。
兄のことを名前で呼ぶ涼。
…一体兄とはどういう関係なのだろう。
「…頼む彗、また今度奢るからよ」
「…わあったよ、出ていけば良いんだろ」
「さんきゅ」
「…お前今度洗いざらい喋らすからな」
あの兄が、仕事中に"彗"として話すところを聞くなんてこれが初めてだ。
…涼だったらそういう風になるんだと思うと胸が苦しくて、目頭がほんの少し熱くなった。
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