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「何かあった?」
数日後、怪我は綺麗に治り、久しぶりに後数日で退院できる昴流の元へ訪れた。
昴流は俺が来るなりそう聞いてきたのに俺はにっこりと笑って「どうして?」と尋ね返した。
「…聞き方が悪かった。…"大丈夫だった"か?」
「ーーっ、」
その言葉が意味するのはただひとつ。
上手く隠せてるつもりだった。
怪我だってもう治った。
なのに何でお前は分かるんだよ、鋭すぎだろ。
自分の事になると超鈍いくせに…。
「お前がこんなに来なかった日は無かったから」
「バイトで忙しかった」
「嘘。だってお前からそんな連絡来なかった。お前いつも連絡くれるのに。それにそろそろ"来る"頃だったし」
…長い付き合いなんだから言わなくてもわかるって事か
「まだ痛む?」
昴流が昨日まで痣があった俺の頬を撫でる。
眉を八の字にして俺の顔を覗く昴流に「大丈夫だ」と笑って返せば安心したのか小さく微笑んだ。
「良かった」
「っわ…、くすぐってぇよ昴流」
ぎゅう、と俺に抱きついてきて俺の腹にすりすりと頭を擦り付けてくる昴流。
…あーこれ、椿がいたら嫉妬するやつだ。
まあ、別にあいつに悪いとは思わねぇけど。
「…バイト先の人がさ助けてくれたんだよ。だから何時もより早く終わって、怪我もそこまで酷くなかった」
「……バイト先?」
「そ、大学生ですげぇ時間にうるさいゴリラな暴君。お前絶対元ヤンだろって言いたくなるくらいの人でーー」
「っふふ…、」
俺が零のことを話していると何が面白かったのか昴流がクスクスと笑いだした。それはどこか嬉しそうなものでもあり、どうしたんだと俺は首を傾げる。
「お前が楽しそうに人の事話すの初めて見た」
…楽しそう?俺が?
「嗚呼…、その人の事気に入ったんだ?」
俺が、零を気に入ってる…?
一番付き合いの長い昴流が言うんだからそうなんだろうけど今一ピンと来ないな。
…いや、何だかんだであそこで働くのは楽しいからやっぱ俺、気に入ってんのか、あいつのこと。
「…まあ嫌いではねぇよ」
「じゃあ好き?」
「どちらかと言えばな」
「そっか」
「あ?何」
「んー…何でもねぇよ」
好きなやつなんて多くはないけどそれなりにはいる。
だから零に好意を抱いても別にそこまで可笑しいことでもないし、変わったことでもない。
なのに何故か昴流は嬉しそうに笑っていた。
その意味を知るのはまだまだ先の事。
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