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「…つまり、貴方は私に涼と別れろと?」
「嗚呼、そうなるんですね…」
良く考えてみると俺がいってることって遠回しでそうなるのか。
「…貴方本当に自分の立場分かってる?」
身を引くどころかお前が別れろと言い始めた俺に、疑いの眼差しを向ける彼女。
そんな彼女に「分かってますよ」と言い、言葉を続ける。
「俺はあなたたちの関係には邪魔な存在だってこと。…俺が身を引かないといけない立場だってことも」
俺は横から入ってきた人間だから、元の場所に戻らないといけない人間。
「…あなた達は綺麗な人同士で俺と違ってお似合いだ。…それに涼だってゲイじゃないんだからこんなどこを触っても固くて胸はなくて子供も作ることはできない。…そんな男と付き合うより貴女みたいな女の方と付き合った方が良いんだと思います。…俺はあなたには敵わない」
敵わないと認めてしまった。だって仕方がないじゃないか。普通に考えて何の取り柄もない、しかも男な俺よりも彼女の方が涼の隣にいた方が良い。
俺にあるのは涼と別れるって選択肢だけ。
…そんなこと分かってる。
だけど、敵わないと認めることはできてもそれだけは認めたくない。
「…貴女は涼とじゃなくても大切な人は出来ると思いますが、俺には涼しか居ないんです。だから別れたくない。…涼と居たい。例えそれが"浮気"なんだとしても俺には涼しか…」
…嗚呼、自分でも何が言いたいのか分からなくなってきた。けれどそのくらい俺は別れたくないと必死だという事で、それはきっと周りが見れば笑えるくらいのものだろう。
こんなに誰かの事で必死になったのなんて初めてじゃないだろうか。
「貴方、分かってるっていってるくせにいってることは真逆ね」
「…すいません。けど本当に俺には涼しか居ないから…」
「…やめてくれない?その言い方。まるで私が貴方をいじめてるみたいじゃない。」
「みたいじゃねぇよ、そうなんだよ。…いくらお前でも怒るぞ、真」
「……あら、もう怒ってるじゃない」
それは、今まで話題の中心となっていた俺がよく知る人物のだけど初めて聞くような殺気の籠った怒りを露にした声。
それに彼女は「そう怒らないで」と苦笑い。
「あのさ、俺昴流になんかしたら許さないって言ったよな?」
「だって反応が可愛らしいんだもん」
「ふざけんなよ…、うちのワンコ泣かしたら"あれ"手伝ってやらねぇからな」
「それは困るわね…」
彼女は先とは違う、初めに見せた柔らかい雰囲気に戻っていて、困ったように笑った。
話題の中心になっていた本人がきたのだからもっとこう…話の内容的にも修羅場な感じになってもおかしくないのにそんな雰囲気は全く無い。
想像していたのとは全く違うこの雰囲気に俺はついていけず、ただその光景を眺めることしか出来ないでいた。
「昴流、こいつの言ってることは気にしなくて良いからな」
彼女に向けていたのとは違う、優しい声でそう言いながら、涼の手が俺の頭を撫でる。
「こいつが言ってんのは全部出鱈目だ。お前の反応を見て楽しんでただけだ」
舌打ち混じりにそう言った後、彼女…真と涼が呼んだその人をギッ、と睨んだ。
…出鱈目?全部…??
俺の反応を見て楽しんでた…だけ?
予想していなかったことの繰り返しで頭がついていかず、涼に言われた事を理解しようと頭の中で何度も何度も言葉が復唱される。
結局理解できたのは1分ほど経ってからだった。
「…本当にこの人と付き合ってないの…?」
「当たり前だろ。俺の1番はお前だけだ」
「ほんと…?」
「嗚呼、だから安心しーー」
「良かった…」
涼の言葉で今まで溜め込んでたモヤモヤとか不安とかが嘘みたいに無くなって、俺が涼の1番なんだと涼の口から言ってもらえたことの安心感と嬉しさで胸のなかが一杯になって、それを体で表現するかのように俺は涼に抱きついた。
「…俺、男だから…やっぱ涼女の方がいいんじゃねぇのか…って思って…、けど俺は涼と別れんのは嫌で…」
「俺はお前だから好きなんだよ。男でも女でも同じだ。本当お前は…、俺がずっと好きって言ってやらないとネガティブなのはなおらねぇのか?」
「…あう、」
「俺はお前以上に好きなやつなんて居ないし、これからも出来たりしねぇから。命かけても良いぜ?」
自信に満ちたその声は俺のよく知る涼で、こう言うときの涼は絶対に嘘をつかないから、その言葉で凄く心が満たされた。
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