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東京に行くのは年末。冬休みの間だ。
…だけど、その前に
「あー、もう分からん!!」
昼休み、吉柳が教科書を机に叩き付け、頭を抱えていた。
他にも時間さえあれば問題集を解いている人がちらほらと見られる。
そう、年末といえば冬休みだが、その前にあるのはお馴染みの期末テストである。
「わかんねぇ…意味わかんねえよ…」
吉柳が現在みている教科書は物理。力の法則とかエネルギーとかそんなの。
…物理って公式当てはめたら解けるし、比較的簡単な科目だけと思うのだが。
「公式は覚えてるけどなんの公式当てはめたらいいのか分かんないんだよ…!どれに何を代入したらいいのか分からないんだよ…!」
…問題ちゃんと読めば分かると思うんだけど…ああ、どうやって説明すれば良いんだろう。こういうの。
「…え、俺出来ないからね」
愁に視線を送ったらそう即答された。
…嗚呼、そうだった。こいつ頭良くても教えるのは駄目なんだった。天才はやっぱ違うわ。
…けど俺が教えるにしても、何をどう代入するか分からないって次元だったらどう教えたらいいか分からねえ…。伝わらない可能性の方が高いし…。
「…ちょっと見せて」
「あ、ああ…」
教科書の例題を読みながら机の中からルーズリーフを1枚取り出してそれにボールペンを走らせる。こいつにも分かりやすく説明するために試行錯誤。
「…狼城って字可愛い」
「あ?」
「意外にも丸文字だと思って」
俺が書いてるのを横から見て、吉柳がそう呟いた。
…丸文字……。言われてみればそうかもしれない。あんま意識したことなかった。…けど俺よりも丸文字な兄貴がいるんだよなあ………これって遺伝?
「え、流星さんもそうなの?」
「多分ルイちゃん見たら驚くよ。流星さんの字サンリオチックな丸文字だから」
「…え、女の人が書いたんじゃなくて…?」
「…って疑うくらいの字」
「なんかちょっと見てみたい」
サンリオチック…ズバリな例えだな。本当にそのくらい兄貴の字は丸い。
だけどあの人自身はそれが自分が書ける最上級の綺麗な字のつもりらしいからあんま言わないであげて。弟の俺でもあれは可愛いらしい字だと思うけど。
「…で、この問題なんだけど」
話している内に何とかこれなら吉柳でもわかるだろって解答が出来上がったので1から解き方を話していく。
まずは問題でどう言うことが聞かれてるのか。それから導き出せる公式と代入するべき値。
授業でもしないんじゃないかってくらい詳しく説明していった。
「……で、答えがこうなる」
「ほーー…なるほど」
「…分からないとこあった?」
「いや全然。教師よりも分かりやすかった。ありがと狼城」
…なら良かった。
「同じように考えていったら公式分かるようになると思うから」
「ん、さんきゅー。…あ、他にもわからない科目あんだけど教えてくんね?」
「…良いけどなに」
「現文と現社と世界史以外全部」
「それってさ、全科目分からないのとほぼ一緒だよな」
なんでこいつこの学校はいれたんだろ。
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