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整理ができても怖かったくらいだ。今思えば俺は涼があの日…病院で兄とあったときに言ってくれた事に半信半疑だったのだのだろう。
「まず、…そうだなあの"教育方針"について話そうか」
そう言って涼は俺の知らない兄の事を…否、父と兄の事を語り出した。俺の様子をうかがいながら、言葉を選んで。
「流星さんのようにはなるな。…それは別に流星さんを"失敗例"にしていた訳じゃない。お前のために言っていたことだ。…結果としてお前にはそう聞こえて決まったみたいだけどな。流星さんは進学どころか卒業できるかも危うかったそうだ。そんな状態で行ける大学なんて限られてるだろ?だから流星さんは就職する道を選んだ。…けど進学を諦めないといけなかったやつを雇うところも中々見つからなくて結局就活は2年目に突入したらしい」
ーんで、やっとの思いで就けた仕事先が今のとこだー
「…親父さんと彗はお前に流星さんと同じ道を歩んでほしくなかった。幼いうちに辛くても周りの人以上に頑張っていれば大人になったときに流星さんみたいに道が限られてしまうことはない。…お前に冷たかったのはその延長線だ。もともと不器用な人達だったのもあるが、お前を甘やかしてたら自分の限界をすぐ決めつけるような奴になってしまうかもしれない。…あれだ、獅子は子を崖に落とすってやつだ」
厳しかったのも、冷たかったのも俺のため。
あの人達の態度からは考えられないその裏に隠された真逆のその愛情。
「…分かるわけが、無いだろそんなの」
大人になれば…今くらいなら分かったかもしれない。けどあのときの俺がそんなことに気づけるわけがないじゃないか。
「…嗚呼、そうだな。だから言っただろ、あの人達は不器用だと。…子供にも分かる愛情表現が出来なかったんだ。それに気づいたのはお前が中学に上がって初めの定期テストが帰ってきたとき。…愛情を感じられず今にも壊れてしまいそうなお前を見ていられなく、そして後悔した。…お前を地元に戻らせたのはあのままあの学校にいればきっとお前は壊れてしまうと思ったからだ」
ーけど、それが失敗だったんだろうなー
「お前とちゃんと話さずにそれを決めてしまって結果お前は壊れてしまった。…また、愛情表現の仕方を間違ってしまった。…そのせいでお前との溝は段々と深まっていった」
ここまで来るともう"家族"としての自分たちの声は届かない。いつの間にかピアスの数が増えていく、傷だらけになって帰ってくる俺をいくら心配してもそれを言葉にすることはできなかった。
…否、先程声が届かないと言ったがもしかしたら俺を"こう"した自分達が俺を心配する言葉をかけてやれる資格なんてないと思っていたのかもしれない。
「…流星さんがお前と一緒に住みたいと2人に言ったとき2人とも安心したそうだ。流星さんとならお前がまた笑ってくれるようになるんじゃないかと思ってな」
…全部、全部俺のため。
俺は2人にとって要らない存在だと思わされていた彼らの言動は全部、俺を家族として愛してくれている故の物だった。
「…なあ、昴流。許せなくても良い。だけどちゃんと愛されていた。…お前をちゃんと見てくれていた。それだけは分かってやってくれないか」
あの時はこの言葉に頷けなかった。
けど、今なら頷ける。
そして、俺は2人の事を許すのだろう。
2人に認められたくて頑張って、辛くて、苦しい思いをした。2人のせいでおった傷は無かったことには出来ない。
…だけど、俺はそれでも2人の事が好きで、嫌いにはなれないんだと思う。
だって、そうじゃないと認められたくて頑張ったりなんてしないし、2人に愛されたいと望んだりなんてしないから。
だから俺は2人を許して、また2人と向き合っていこうと思う。
「兄さん、大好きだよ」
今日、一番兄の、そして父の存在を身近に感じられた気がした。
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