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「昴流どれ?」
「…えっと、これでコーヒーのホット」
「了解。…じゃあセットでこれを2つで2つともコーヒーのホットでお願いします。サイズはーー…」
昼時になり、フードコートで昼食をとることにした。
注文し終わり、番号のついたベルを渡される。それを受け取ってすっかり増えた荷物片手に席を探す。
休日と言うのもあり、中々空いている席を見つけることができなかったが何とか座ることができ、座らない椅子に荷物をかけた。
5分ほど経ってベルが鳴り、涼が取りに行くと席をたつ。俺は荷物を見とかないといけないから待機。
「…遅いな」
それからまた5分位が経ったが中々涼が帰ってこない。…人も多い上、買ったところからこの席は大分距離もあるから仕方ないのかもしれない。…もしかしたら席が見つけにくいのかも。
…まあ、席がわからなくなったら連絡来ると思うし、俺は携帯を取り出して暇潰し程度にするようなゲームを立ち上げてポチポチと操作しながら気長に涼の帰りを待つことにした。
「…お前、桜木…か?」
疑問系で俺の名前を呼ぶ声が聞こえ、辺りを見渡す。その動作で確信したのか「やっぱ桜木か」と少年が俺に近づいて来た。
「変わりすぎてて吃驚した」
「…、はあ」
その少年は俺が色んな意味で縁のありそうな…不良ぽい見た目じゃなくて、柔らかい雰囲気。俺の事を桜木って言うってことは小・中学での知り合いなんだろうが俺はこんなやつ記憶にない。
「うわー…、久しぶりだな。すげえ身長伸びたじゃん。3、4年前は140位しか無かったのに」
「……はあ」
俺はあんたの事なんか覚えてないし、話すことなんてないからさっさとどっか行ってほしいんだけど、向こうはそうはいかず、涼が先まで座っていた椅子に腰かけた。
…なんなんだこいつは。
3、4年前ってことは小学生の時か中学…地元じゃない方のちょっとだけいってた時の学校の知り合いなんだろうけど本当に俺は知らない。
…というか小中での知り合いなんて愁だけしかいない……。あ、これ聞いてる側に「ボッチ乙」って笑われるやつ。
…兎に角、俺は知らないんだ。
「…悪いけど帰ってくれないか」
知らない相手と俺は久しぶりー元気だったー?ってのりで話すなんて器用なことは出来ない。
それにもうすぐ涼も戻ってくるだろうから早く座ってる椅子から立ってほしい。荷物をどかして席を作れば良い話だけど床に荷物を置くのは…少しだが抵抗がある。
…って意味で言ったんだけど省きすぎたらしく相手はピクッと眉間を動かし、舌打ちをし、怒りを露にさせた。
「…ほんっとお前変わってねえな。人を下に見るその言い方。」
「…下に見たつもりは無いが」
「いや、見てるね。…どうせ中学をすぐに変えたのもそういう意味なんだろ?」
「…は?」
…あれは別に下に見てたから…言い換えれば「ここで学ぶようなことは何もない」って意味で止めた訳じゃないんだけど…。
「お前さ、首席入学ってすごいねって同じクラスの奴が言ったときなんて言ったか覚えてる?「普通だと思う」…だぜ?…どう考えても下に見てんだろ」
「…、いや、それは」
兄さんと父さんに認められたくて、首席で入学するために勉強してきたんだから普通って意味で…たぶんお前が言いたい「お前らより頭良いから普通だと思う」の"普通"ではないだけど……。
というか当時は、2人に認められたいってことしか考えてなかったから周りの事なんて見えてなかったし…。
少年の言い方からして少年と俺は俺がすぐにやめてしまった中学の同級生…だったんだと思う。それなら彼の第一印象にも頷ける。
…まあ、それは良いとしてこの誤解をどう解けば良いんだろう。否定したらしたらで切れられそうだし…。
「んで?止めたら止めたで最恐のお不良さん??…なんなのお前?」
こいつはどんだけ人を下に見れば気がすむんだ…的なことを言いたいんだってのは分かるには分かる。
2ヶ月弱で学校を止めて、それから半年程たってそんな風に言われるようになって。
それがそこの生徒からしてみれば当時の俺は舐めてるように見えたのかもしれない。
…けど俺だって別に言われたくて最恐って言われるようになったわけではないし、そこの生徒を見下すつもりで学校を止めた訳じゃない。
…全てが食い違っててどう話せば良いのか分からないな…。
「…無視か?…はっ、俺と話す価値なんてないって?」
「…いや、そういう訳じゃ…っ、ぃ、」
どう返せば良いか悩んでいるとグイッ、と少年の方へ思いっきり髪を引っ張られた。
どうやらまたここでも勘違いされたらしい。…まじでこれどうやって誤解を解こう…。
早く解けるのなら解きたい。人が多くてあまり目立ってないけど人目は有るわけだから…。あまり面倒事にしたくない。
それと、髪引っ張られ続けんの凄く痛い。
「…ああ、そういえば噂で聞いたけどお前ホモってマジ?」
「…あ?」
「何だっけ、アクマの女?…ホモとかマジキモいわ…。ホモに下に見られてると思うと本当ムカつく」
「…ぁ゛…っ?!」
見えにくいのを良いことに机の下で、こいつの足がグリグリと股の間を強く押す。嫌悪の込められたそれに痛みで顔を歪めた。
「…あれ、勃たねぇの?ホモなんだから勃つんじゃねぇの?」
俺は痛くて勃つようなMじゃねえよ。
「…っは…、いい加減に…しろ…ッ」
人目を考えて俺からは手を出しはしなかったけど、これ以上は俺だって殴ってしまいそうだ。
脅しではないけど、そういう意を込めて、こいつを睨んだ。
一瞬、怯んだが直ぐに「殴りたけば殴れば?」と開き直った。
「その状況じゃあお前の方が加害者…だろ?それにお前が"そういう"奴だって知れば誰もお前に味方なんてしねえよ」
「じゃあ俺はお前が公然の場で嫌がってる野郎のを踏んづけて興奮してる変態野郎って言いふらしてやろうか?」
ガンっ、と強くファーストフードが乗ってあるトレイを俺たちの間に置いて、男が間に入ってきた。
その男ってのは勿論涼なんだけど、それを知るはずもない少年は涼に「アンタには関係ないだろ」と吐き捨てた。
「俺はこいつとここに買い物に来てんだよ。部外者はてめぇの方だろバーカ」
「ああ…?!」
「…俺さ、今すっっ…げえイラついてんの分かる?分かるんならその汚い足を昴流から退けて、俺たちの前からキ・エ・ロ」
にっこりと、表情だけは柔らかかったが、声、口調から涼が怒ってるのが嫌なくらいに伝わってきて、逆にその笑顔に恐怖を覚えさせられた。
「これ以上迷惑行為を続けるんなら警備員呼ぶぞ?そこら辺にいるからここで大声で言えば来てくれるんじゃねぇの?」
ーこれでもお前は被害者だと言えるか?ー
そう言って、辺りを見渡し始めた涼。警備員を探しているんだろうか。
…まあ、見当たらなくてもここはフードコート。叫べば店の人間が呼んでくれるとは思うが。
冗談だと思っていたのだろう。警備員を探し始めた涼に驚きを隠せない少年。
涼が本気なんだと分かれば、小さく舌打ちをして俺から足を退けて立ち上がった。
「…必死になってキモ、お前もホモかよ」
…と、捨て台詞を忘れずに涼が警備員を呼ぶ前に急ぎ足で立ち去っていった。
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