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「すばるくーん!!」
「…いらっしゃい、梓さん」
そうしているうちに生地が焼けたのでケーキの盛り付けをしているとベルの音がなり、見知った顔の女性が入店してきた。
「聞いてよ皆恋人恋人って付き合い悪いのよ」
「…それはそれは」
カウンター席に座るなり愚痴り出した梓さん。
その後しばらく皆が付き合い悪いという愚痴を聞かされていたのだが、ふと「良い匂いね」とカウンターを覗いてきた。
「ケーキ!昴流君本当に器用ね」
「予約が間に合わなかったので…。ほら向こうに大人数で居るでしょう?」
皆が座ってる方を指差しながら言うと、皆とパーティをやっているからケーキが要るのだと俺が言いたいことを理解した梓さんは「なるほどね」と呟いた。
「…って良いの?昴流君あそこにいかなくて」
「店の手伝いをしながらケーキを作りながらで向こうに行ってるんで大丈夫ですよ。ケーキが作れたら注文がなければ向こうにいくつもりですし」
「あら、そう。なら良いんだど。…に、しても昴流君の知り合いってイケメン多いわね」
「ええ…そうですね」
言われるまで意識していなかったが、確かにそうだ。皆女の人にもてるような容姿。吉柳もスポーツ馬鹿でなければモテる…いや、そうでなくとも一部の人間には人気なのだろう。
「あそこまでイケメンが並んでると目の保養ね」
「はは、良かったですね」
その感想に俺は話の流れで「因みに誰がタイプなんですか」と続ける。
梓さんは少し考える素振りを見せて「右から3番目」と答えた。
そこに座っていたのは涼だった。
自分の恋人があの中で1番格好良いと言われているようで嬉しい反面、少し何故かモヤモヤとした。
「…彼年は幾つなの?」
「今年?来年?で28ですね」
「へー、意外ね。もっと若く見えるわ。…趣味は?」
「そうですねーー…」
梓さんが涼について質問する度にモヤモヤが増していった。
そのモヤモヤを表に出さないように俺はその質問に笑顔で答えていく。
そうしている内に、そのモヤモヤとした物の奥に悲しみがあるのに気づいてしまった。
涼についての質問で俺は答えれないものが多かった。…答えたくないんじゃなくて答えれないものが。
付き合っているって言うのに、俺は涼の事を全く知らないのだとこの時初めてそれに気づかされた。
それに気付いた途端、涼の事を俺以上に知ろうとしている梓さんにまたモヤモヤが膨れ上がっていく。
「声かえてみようかしら」
「…え?」
「さっきからこっちを見てるから声かけてみようかなあって」
「え、見て…ました…?」
「すごい見てた」
俺が気づかなかったことに梓さんが気づいて、またズキッと何かが胸に刺さった。
涼に声をかけようとしている梓さん。俺が話題を振ったのが悪いのに、話しかけるかどうかは梓さんの自由なのに、行くなと梓さんの腕を掴みそうになる自分が居た。
「ーーん、昴流くん」
「え、あ、はい」
名前を呼ばれ、我にかえる。
「どうしました?」と笑顔で問うと梓さんは「私話しかけてくるね」と席を立とうとした。
「…、どうしたの?」
「…ぁ、すいません」
驚いたように俺を見る梓さん。無理もない。俺が彼女の腕を掴んだのだから。
けれど、その行動に1番驚いたのは俺自身だ。
俺に梓さんを止めなければいけない理由はないのに、なのに手が気がつけば出ていたのだから。
「もうすぐで作れる、ので」
咄嗟の言い訳をして梓さんから手を離す。
そうすると
「ちょっとだけ、すぐ戻ってくるわ」
と、また涼のもとへ行こうとして、また梓さんの腕を掴んでいた。
今度は無意識に、ではなく"俺の意思"で
「駄目…。梓さんでも行ったら怒ります」
ー嗚呼、"これのせい"かー
モヤモヤの原因が独占欲からだったのだとここでやっと俺は気づくことができた。
「…昴流くんの鈍感」
自分の感情にやっと気づけれた俺に梓さんがクスリと笑い、そして俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ごめんごめん、ちょっといじめちゃった」
「え…?いじ、め…?」
「私が彼が気になるって言ったら昴流くんあからさまにしょんぼりするし、私が彼のこと聞くとちょっと不機嫌になるし。けど昴流くん自分の気持ちに気づいてないみたいだし?…まあ後は昴流くんが可愛くて?」
…つまり梓さんは俺の反応を見て楽しんでたプラス俺が鈍いから自分の気持ちに気づかせようとしていたって事で、え、でもじゃあ涼のこと気になるって言ってたのは?
「嘘よ嘘。…第一昴流くんに手出すなって感じに睨んでくるのよ?それで話しかける私って馬鹿じゃない?」
「え、睨…?」
「そ、隠すことなく私に殺気送ってくるのよ?そんな人を気になると思う?まあ別の意味では気になったけど」
「別の意味…?」
「昴流くんと付き合ってるのかなあ、って?」
梓さんはただ単に俺と涼が付き合ってるか気になって、付き合ってるなら不機嫌になってもおかしくない行動をとっていただけだったのだ。
普通に聞けば良いのに梓さん曰く「こっちの方が面白いじゃない」…らしい。
梓さんはどうやらサディストだったようだ。俺の周りSな人多い気がする、気のせいか。気のせいであってほしい。
…嗚呼、でも何だ。涼を梓さんは元々そういう目で見ていなかったことが凄く安心した。
「…ごめんね?」
「…良いですよ、もう…」
「って言って、ほっぺ膨らませないでよ。悪かったから」
「…つつかないでください。…バカ」
「ごめん萌えちゃいけないって分かってるけど萌えた」
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