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『天使』
隣で俺の手を恥ずかしがりながらだが、幸せそうな顔をして握る恋人をそう言わずしてなんと言おう。
昴流は中学の頃は喧嘩ばかりをして恐怖、憎悪…そういった大きくまとめれば"負"の人の視線を送られこそしても、好意の視線を送られることは無かったのだと思う。
だからそういうのには驚いてしまうくらいに鈍感で、それは安心できるのと共に不安でもあった。
昴流は丸くなったと思う。俺と付き合い始めて。
流星さんと住むようになってから、片っ端から喧嘩を吹っ掛けていくのは止めたらしいけど、俺が言いたい"丸い"はそういう意味じゃなくて。雰囲気が柔らかくなった。例えるなら、狼がチワワになったくらい。
元々昴流の顔は良い方だ。それは彗と流星さんの容姿を見れば頷ける。なのに今までそういう…好意の目を向けられてこなかったのはそれよりも恐怖を先立たせてしまう昴流の刺々しいオーラのせいに他ならない。
それがなくなったってことは…そう言うことだ。実際昴流は本人は気づいてないようだが学校でも影で人気がある。認めたくないが、女だけじゃなくて男にも。
そこで少し話を戻すが、昴流はそういうのに疎い。あからさまなものでも気づかないくらい。先の出来事が良い証拠だ。
女ならその点は安心できるが、男相手なら気がついたら襲われてましたーなんてことがあるかもしれない。つか今回のがあのまま行けばそうなってた。…まあ、俺も人のこと言えねえけど。
鈍いことは恋人としては嬉しい。そりゃあだって俺の想いだけに気づいて応えてくれているんだから当たり前。
けど、その鈍さが時に命取りになる。
そもそも、昴流はゲイでもないし俺みたいにバイでもない。
俺と付き合う前に魔咲と何度も寝た事があるが、それはノーカン。だって魔咲が異性だったとしても、そうなってた筈だから。あいつは昴流の恋人じゃないけど特別な存在。俺だってそれは割り切ってるから、その関係については魔咲との関係を聞いたあのとき以来触れていない。
…そんな昴流が同性に性的な対象として思われ、触れられることに抵抗がない訳がない。
昴流が少しでもその気があったら俺の心配は多少は小さくなってた。
昴流がレイプされるかもしれないって心配もある。それ以上に俺が心配してるのは昴流のそうなった後の心の方。
元々傷つきやすい子。今回のことだけでも凄く落ち込んでたからもし最後までされたら……最悪また壊れてしまうかもしれない。
俺はそれが凄く心配だった。
「涼、ん」
「…ん」
昴流に差し出された食べかけのメロンパンにかぶり付くと、「間接キス。…仕返し」と朝の事を根に持っていたのかしてやったりと笑った。
「…すーばる?お前も食べるんだから意味なくね?」
…なんてからかってみれば顔を真っ赤にして朝と同様それと見つめ合い始めた。
ー嗚呼、本当に可愛いー
この笑顔を俺が守っていかないと。
こんなにも愛おしいと思う相手が出来るなんて昴流に出会うまでは思ってもみなかった。
「ん?どうした?」
「ふふ、昴流がどっか行かないように?」
「な…行かねえし…、」
昴流の手を握る手につい力が入ってしまい、それを笑顔で誤魔化すと俯いてしまった。けど昴流も握り返してくれた。…所謂恋人繋ぎで。
「…これなら、行かねえだろ」
俯いてるから顔はよく見えないけれどきっと真っ赤なんだろう。
もう、それは反則。2人きりなら抱いてた。
「ふふ、かわいー」
「な…っ、やっぱ戻す…っ」
「えー、やだ」
恥ずかしがって戻そうとする昴流の手をぎゅう、と握り締めると諦めたのか、さらに顔は俯いてしまったけど手の力が緩んだ。
…嗚呼、駄目。可愛すぎ。
「大好きだよ、昴流」
ー俺の、"初恋"の人ー
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