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あの後父さんと連絡先を交換して、定期的に連絡を取り合うようになった。
家族で食べに行こうと言い出したのは兄貴らしくて、兄貴には感謝してもしきれない。兄貴のこういうところが大好きだ。
そして、少しだけ時は流れて新学期がやってきた。
「狼城あけおめ!」
「…お、おう…」
教室に入るなり吉柳の元気な挨拶。
いやあけおめって、お前、正月にメール送ってたじゃん。…って突っ込みたいのを耐えて、俺もそれに「あけおめ」って返した。
「魔咲は一緒じゃなかったのか?」
「…あいつはサボるってメール来た」
今日は始業式だけ。話を聞くのがだるい、バイト入れたから休む、と愁から朝連絡があった。理由があいつらしいといえばあいつらしい。
「うっわー…、椿先生怒るぞ…」
「だろうな」
…ま、愁の場合、それが目的でもあるんだろうけど。
「…そう、魔咲君は休みなんですか。初日から休まれると色々と困るんですがね、私が」
案の定涼は、S.H.R.で出席確認をしている時、仮面の上からでも分かるくらいに怒ってた。それはもう、教室が凍りつきそうなくらいだった。
後から聞く話だが、教頭に休んだのを誤魔化すのがかなり面倒ならしい。ここの教頭式とかに凄い拘りがあるみたい。
「狼城君は…、あー、式だけでいいのでピアスを外してください」
「ん…っ、は、誰がてめえの言うことなんて聞くかよ」
連絡事項を伝え、俺に近づいて来て俺のつけていた…先日涼が選んでくれたキャッチピアスを引っ張った。
その手を俺は振り払って"涼と付き合ってない俺"を演じる。何気にこれ楽しいから苦なく続けられてる。
まあ、口だけの演技だからピアスはちゃんと式の時は取る。
「…はあ、せめてバレないようにしてくださいね。…では時間ですので廊下に並んでください」
ため息混じりに"教師"として俺を注意すると時計を見て指示を出す。それに従ってゾロゾロと生徒が廊下の方に出ていった。
「学校でも俺が選んだの付けてくれてるとか、そんなに嬉しかった?」
「…~っ、」
「クク…、似合ってるよ」
廊下に出ようと立ち上がると耳打ちをされた。廊下に皆が出ていったからって止めろよ。
『だったら悪いかよ』
今絶対赤くなってる顔を周りの奴に見られないように隠しながら、端末の電源を入れてメールを送った。
嗚呼、そうだよ。嬉しかったよ。嬉しかったから付けてんだよ。
体育館へ向かう途中、そのメールに気がついた涼が頭を抱えて、猫を被るのを忘れ舌打ちをしたのはまた別の話。
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