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ー思ったよりも遅くなってしまったな…ー
家に帰って家事を終わらせて、晩ご飯を作ってたりしたら涼のマンションにたどり着いたのが8時過ぎになってしまった。
いつもは家に帰ってる時間だから大丈夫だと思うけど、帰ってなかったらどうしようか。寝てるかな。
連絡すれば良かったなと後悔しながら集合玄関の暗証番号を入力にして中に入り、涼が住んでる階までエレベーターで上った。
『誰ですか、もう寝るんで帰ってもらえます?』
家のインターホンを鳴らすと暗い声。
「涼、俺。疲れてるのにごめんね」
『昴流…?』
「渡したいものがあるから。…それを渡したら帰るから開けて?」
昼よりもくたびれたその声を聞いたら、とても泊まらせてとは言えなかった。
泊まれなくてもいいからせめて、せめてこれだけは渡したくて、勝手だとは思うけど開けてもらうように頼んだ。
『…嗚呼、今開ける』
スピーカーを切り忘れたのか、スピーカー越しに足音が聞こえ、ガチャとドアの開く音がした。
「…何その荷物」
「本当はさ、泊まろうと思ったんだ。けど涼疲れてるみたいだから渡したら帰るよ」
「…お前今日放課後無理って」
「家事早く終わらせてお前のとこに行きたかったから。…こんな時間になっちまったけどな」
「……、入って」
「…良いの?」
「寒いでしょ、泊まっていきな」
「…ありがと」
申し訳ないと思いながら、涼の許可が下りたので家の中に入らせて貰った。
家の中は明かりひとつついてなくて、本当に寝るところだったのかもしれない。
「ごめんな、こんな時間に」
「良いよ。…それで俺に渡したいものって?」
リビングの電気をつけてエアコンのスイッチを入れる。嗚呼、暖房つけてなかったんだ、通りで寒いと思った。
「兄さんからさ、聞いたんだお前のこと」
「え…?」
俺のその言葉に涼の顔が青くなるが、俺はそれに気づくことなく紙袋の中から大きな箱を取り出した。
「だから、頑張っちゃった。お前に喜んでもらいたくて。お前の1番になりたくて」
そして、リボンをほどいて箱を開け、手に取った1つを涼の小さく開いた口に軽く押し当てた。
「誕生日おめでとう涼。ケーキじゃないけど涼が好きなシュークリーム作ってみたんだ。…涼?」
涼が固まってしまった。…あれ、シュークリーム嫌いだった?おかしいな、兄さん好きだって言ってたのに。
「涼?大丈夫?…涼?へ?本当に大丈夫…?!」
そして、何故か涼の目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。
それに慌ててシュークリームを戻して涼を抱き締めた。
「シュークリーム嫌いだった?ごめんね?」
「…いや、好きだよ。好き…。ありがと、すげえ嬉しい」
「良かった。俺一杯昨日作ったんだよ20個位。全部涼の」
「はは…っ、マジで作りすぎだろそれ…」
「だって涼の誕生日でしょ」
「…だからってんなに作るかよ…っはは、馬鹿だろ…、ほんと、馬鹿すぎ…」
俺を抱き締める手は泣いているからか震えていたけれど、声は先よりも明るくなっていた。
元気になってくれたんだ。良かった。
「最近涼の誘い断ってばっかで悪かった。…上手く出来なくて練習してたんだ」
「1ヶ月もかよ」
…う、仕方ないだろ生地が上手く焼けなくて試行錯誤を重ねたんだから。
「…綺麗なの渡したいだろ」
「クク…ッ、別に形くらい良いだろ」
「…お前の1番が良かった」
「何その1番って」
「……お前毎年沢山チョコ貰うって、兄さんが言ってたから…その中で1番になりたかったんだよ…」
小さな事でも、俺の1番はお前になりたかった。これは俺の、独占欲だ。
「…何その理由…ッ、可愛すぎお前…!」
「む…」
「やっべ…マジ泣きしたのいつ振りだろ…この年で泣くとか思ってなかったっつーの…」
「…何で泣いたの」
「嬉し泣き。初めてだわ、んなので泣いたの」
初めて…。嬉しくて泣いたのは初めて…。じゃあ俺1番になれたってこと…?俺涼の1番になれた…?
「当たり前だろ1番以外あり得ねえよ」
…嗚呼、これじゃあ、今度は俺が嬉し泣きしてしまいそうだ。
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