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「…何だよ、これ」
やっと出た言葉がそれだった。
何でこんなことになってんだ。
何で何も言わなかったんだ。
何で何で何で何で。
言いたいことは沢山あったのに、言葉に出来ない。
「見たまんま。…首から下死んでるみたいで笑えるよな」
「笑えない!」
笑えないよ愁。笑って誤魔化そうとしないで。
「何時から酷くなった」
「5ヵ月位前。…昴流が入院した時にババアが来ただろ?そっから段々酷くなってきた。一昨日のなんてさ、失神して気づいたら朝」
5ヶ月。1週間くらい愁が俺の所に来なかった時。それは愁がバイト先の先輩に助けてもらったと言っていたから安心してしまっていた。
次は4ヵ月前。俺が最初に違和感を抱いた時だ。
…俺が、もっと早く愁にこうしていればこんなに酷くならなかった。
俺のせい。
「…そんな顔しないでくれ。お前のせいじゃない」
「俺のせいだろ…ッ?!」
お前が怪我が酷いことを言わなくても、俺なら確認できた。でも気のせいだと今の今まで確認したりしなかった。
俺も同じだ。
形がどうであれ、俺もお前をこうした奴と同じでお前を傷つけた。
かけがえのない存在だったのに。
「俺、俺…っ」
ずっとこんな俺の側に居てくれたお前を傷つけてしまった。取り返しのつかないことをしてしまった。
「…そんな顔されたくなかったら黙ってたのに。泣くな昴流。泣かないでくれ」
「…っ、何で…!」
気づかぬ間に泣いてしまっていたようで、そんな俺を抱き締めて背を優しく叩いて落ち着かせようとしてくれる。
何で、お前はそんなに優しくしてくれるんだ。俺はお前を傷つけてしまったのに。
「お前は何も悪くない。…俺が最初から隠さず言えばよかったんだ。ごめんな」
「何でお前が、謝るんだよ?!悪いのは俺だろ…っ?!」
「じゃあお前"も"悪くない」
「…っ、でも…」
「自分を責めるな。…椿と付き合ってもそのネガティブ思考は直らなかったみたいだな」
「あうっ」
力一杯にデコピンされ、ヒリヒリとする額を押さえる。その上から愁は優しく微笑んで額を擦りつけた。
「お前は俺の事を優しいって言うけど、俺はそこまで優しくない。…本当にお前のせいだと思っていたら俺は今頃お前とこうして話してないよ」
「…俺、しゅう、傷つけたよ…?」
「だから俺はお前になにもされてないって。…そろそろ嫌いになるぞ」
「…嫌…、ごめんなさい…」
「じゃあ、もう言わない。お前は何も悪くない。分かった?」
「……うん…」
「ん、良い子」
痛いだろうに、俺を抱き締めて俺の顔を痣が一杯の胸板に押し付け、頭を撫でた。
俺はまた、お前の優しさに甘えてしまった。
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