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夕食。旅館のご飯って多いイメージがあったけど普通に食べきれた。
普段俺が作らないようなものばかりで美味しくて、満足。涼がここに何度も来てるのも頷けた。
「まだ終わりじゃないからな」
「え…まだ来るの?」
運ばれてこないからもう終わりなんだと思ってた。
「あ…、そういや晩飯の後何か頼んでた。それ?」
「んー、まあそう」
「へー、食べ物だったんだ」
「まだ食べれる?」
「大きいものじゃなかったら」
「じゃあ食べれるね」
小さいもの、ってことか…何なんだろ。
「お時間の方は宜しかったでしょうか」
ノックして入ってきた女将さんのその質問に涼は「お願い」と答えた。
すると女将さんが食器を片付け始め、片付け終わると、何か…箱に包まれてるものを持ってきた。
「えっと……涼?」
「ふふ、開けてみて?」
「……?おう?」
頭にはてなマークを浮かばせながら、ニヨニヨと笑ってる涼と女将さんの前でその箱を開けてみた。
「…え、ケーキ?」
それは、2、3人分ほどの小さいホールケーキ。何で?旅館ってケーキ出されるのが普通なの…?
「あっ向きこっちだった」
クルクルとケーキの向きを変え、上に乗っていたプレートが俺の正面に来るようにした。
そのプレートには文字が刻まれててー……。
「『HAPPY BIRTHDAY SUBARU Jul.20』…?」
「ふふ、誕生日おめでとう昴流」
誕生日……ああ、そうか。今日は7月20日で俺の誕生日だったのか、忘れてた。
「…ケーキ嫌だった?甘さは控えてもらったんだけど…」
「えっ、あ、いや……」
俺がケーキをじい、と見つめていると不安そうな声で聞いてきた。
いや、ケーキが嫌いって訳じゃなくて…。
「俺自身誕生日忘れてたから驚いたというか、涼が俺のために色々用意してくれていたと思うと嬉しくて言葉にならなかったというか…、ありがと」
ふにゃ、と笑って礼を言うと「良かった」と言って胸を撫で下ろした。
「食べよっか」
「…嗚呼」
涼から貰ったものだから保存しときたいけど食べ物だから仕方ない。
果物ナイフでケーキを2つに切って取り皿に取り分ける。
ケーキの中は苺がたっぷり入ってた。
「昴流、あーん」
「…ぁ、う…」
ひと口サイズに切り分けたそれを俺の口元に運ぶ。…クリスマスの時も同じことがあったような…。
「すーばる?」
「っ…」
恥ずかしいから1人で食べたい。
けど、有無を言わせない涼の笑顔に気圧されて、涼の手首を掴んでそれにかぶりついた。
「美味しい?」
「ん、…あんま甘くない…?」
「お前甘いの苦手って言ってたから控えめで作ってもらうように頼んだ。お気に召して良かった」
ケーキーは程よい甘さで果物の甘さと酸味が引き立ってて、すごく美味しい。
俺のことを考えて用意してくれたケーキ。
小さいけど"とても大きい"プレゼント。
「ありがと、涼」
ぎゅうって涼を力一杯に抱き締めて、嬉しさを表現した。
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