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「えー、お姉さんお兄さんだったの?びっくり」
一般公開する時間になって、ぞろぞろと人が入ってくる。
で、そのきた奴の中で俺のクラスの模擬店を訪れたやつが俺に向かって言うことは大体これだ。
あれか?髪が長いから遠目で見たら女に見えたのか?残念だったな、近くで見たらこれで。
「えー、お兄さんすごい可愛いのに…声聞くまで私全然気づかなかった」
「可愛い…?」
何なんだ、こいつは。訳がわからん。あれか?涼菌に感染したのか?それともあれか、気遣ってくれてんのか?
「…気遣わなくても良い、似合ってないのは自覚してる」
「お世辞とかじゃないですよー…。本当に可愛い…肌は白くて綺麗で睫毛長くて…。つり目な女の子にしか見えないです…」
…何いってんのかわかんね。
それに、なんだろう。どうせなら似合ってないと言ってくれた方が良かったと思ってしまって仕方がない。
だって、女にしか見えないって、男として複雑じゃね?女顔って言われてるようなもんじゃん…?
否、確かに女って間違われた事はある…けどそれは成長期がまだ来ていなかった頃の話で、今の俺の顔は女とは程遠い…筈である。
「お兄さん!写真一緒に撮ってくれませんか?」
「…はい?」
「友達に自慢しようと思います。『イケメン美女と2ショット』って」
「…はあ…」
最近の子は変わってるな。俺も最近の子供だったわ。
「ルウちゃんルウちゃん」
「あ?何?」
奥の方でヤンキー座りをしていた筈の愁がちょいちょい、と俺の肩をつついて俺に耳打ちをしてくる。
「そいつ、まだ何も買ってねえからなんか言って買わせろ」
「…はいはい」
…金の話ですか。つまり、金を払ったら写真撮ってやらんこともない、って事ですね。
はあ、とため息をついて女の人…多分女子高生?に向き直ると営業スマイル。
「うちは和菓子と飲み物を売ってるんですが、どうです?」
「えーっと…どうしようかな…」
「買ってくれたらお礼に写真撮りますよ?…嗚呼、みたらし団子は俺が作ったんです」
…まあ、俺が作ったのはちょっとだけで、本当に俺のを食べれるかは運だけどな。
「作るのは初めてだったので自信はないんですが…頑張って作ったから食べてくれると嬉しいな」
にこ、と笑ってそう言うと、少しだけ少女の顔が赤くなる。
…うーん、バイトの時みたいに…というか梓さん相手にするようにやっただけなんだけど駄目だったかな。
「い、いくら…ですか?」
「1本300円です」
「じゃあ、1本ください」
「…ふふ、ありがとう。はい」
お金を受け取って、少女が財布を片付けてから串に刺さった団子が入った紙コップを渡す。
「えっと、写真…」
「嗚呼…」
「えっ…?」
少女がスマホを取り出し、そう言えばその条件で買ってって言ったんだっけ、と早くも忘れてしまっていた自分の言ったことを思いだし、近づいた方が良いかな、と思って少女の肩に手を回し、引き寄せる。と、少女は目をぱちくりとさせて驚いた。
「一緒に撮るんでしょう?」
「は、はい…ありがとうございます…」
「俺がカメラ持った方が良いですか?」
「あっ、いえ、大丈夫です!」
「そう」
少女が俺らが画面に収まるように手を伸ばす。伸ばすのが辛そうだったから大丈夫だと言ってたけど俺が横から携帯を取って俺が撮ることにした。このままだとすげえ時間かかりそうだったし。
「これで良いですか?」
シャッターを切って、写真が撮れたのを確認すると携帯を返す。撮れたのを見て「可愛い…」と少女が呟いた。多分、これで良かったんだろう。
「ありがとうございます!」
「いーえ」
ぺこぺことお辞儀をして嬉しそうな顔をして少女は他の模擬店の方に行ってしまった。
…嗚呼、疲れた。
「さっすがルウちゃん、たらしこむのが上手」
もう、話しかけられるのは面倒なのでテントの中に入る。入るなり、愁が俺の肩に腕を回しそんなことを言ってきた。
…たらしこむって…失礼だな。
「事実じゃん?ルウちゃん接客のスイッチ入ったら人変わるもんねー」
「それなー。俺クリスマス会の時びっくりした」
「それで椿すげえルウちゃんが相手にするやつ全員睨んでたんだよね」
「本当それ、ブリザードブリザード」
「あれはツンドラでしょ」
「そうかも」
…つ、ツンドラ…。梓さんが涼が睨んでくると言っていたけど、そんなに酷かったのか…。しかも、その相手は梓さんだけじゃなかったなんて…。
「俺の隣で『何可愛い笑顔見せてんの、俺にだけ見せとけば良いんだよ』とか『後でお仕置きだな』とか呟いてんだぜ?まじあのときの椿先生怖かった」
ひえ…、それは怖い…。
今日はあまり営業スマイルすんのやめよう…。涼がタイミング良くそれを見たら2人の話を聞いた感じじゃあ不機嫌になること間違いなしだ。
お仕置きが嫌なのもあるけど、楽しむ学校行事だからな。…この格好じゃあ楽しさ半減どころの話じゃないけども。
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