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61-1
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ちょっと時は進んで、訪れた修学旅行当日。スーツケースとリュックを持って俺は今、
「ちょ、兄貴!!!!止まって!!一旦止まろ?!!」
地獄の兄貴の車に乗せてもらって集合場所の駅へ向かってる。
どう考えても規制よりもあるスピード。カーブでもスピードが殆ど落ちてない気がする。乗ったことはないし、それよりはスピードはないだろうけど、ジェットコースターに乗った気分だ。
「大丈夫大丈夫。愛車に傷付けたりしねぇから」
「安全運転!!」
「でも遅刻したらヤバイだろ?」
「しねぇから!まだ30分もあるから!」
そりゃあ遅刻したら新幹線だしまずいだろうよ。でもそうじゃない。そうじゃないんだってば兄貴…!!
兄貴はそうじゃなくてもいつも運転が雑なんだよ!もっとこう…何て言うの?…そうカーチェイス!カーチェイスじゃないんだから!ここ一般道路!マジでお願い減速して俺が怖い。
「そう言われても餓鬼の頃からこれで来てるからなぁ…。逆に難しいわ」
「昔は昔!今は今なの!」
「む…ほらここ昔っから規制緩いからさ。大体の奴がこん位だと思うぞ?」
知らない俺は知らない。そんな普通知らないし要らない。俺にとっては怖いから普通じゃない。つか、兄貴は速いとか以前に雑すぎる。だから余計に怖い。
「まぁ、大通りになって道が混んできたら周りに合わせて落とすけどな」
「常にそうしてくれると俺は嬉し…っひ?!!」
話の途中でまたしても恐怖のカーブ。俺の口からは抑えきれなかった悲鳴が。
飛び出し対策にスピード落としてはくれてるし、兄貴も運転手として事故は起こさないように気を付けてるのかもしれないけど、それでも元が速いんだから落としたって速い。
もうやだ。兄貴いつからカーレーサーにでもなったの。俺兄貴の車に乗る時いつも心臓バクバクなんだけど。
「何で兄貴って免許取れたの…」
「そりゃあ俺の運転が取れる程度には出来てたってことだろ」
「ちゃんと規制守って初めて出来てるって言うんだよ馬鹿…!!」
運転なんて安全・自分の命が第一だろーが…!何、なんなの。本当に兄貴カーレーサーでも目指してたの。無理、怖い、車から降りたい。
俺が何度も減速しろ減速しろと泣き叫ぶようにして兄貴に必死になって頼んだら、そこでやっとスピードが少し落ちた。それでもまだ速い方だが。先のが怖すぎたせいでちょっと落としてもらえただけで怖くない。人間は怖いものを味わった直後では感覚が麻痺してしまうらしい。
一度父さんに飲酒と喫煙だけじゃなくてこれも怒ってもらわないと駄目かもしれない。それか他の規制の厳しい地域に兄貴を行かして一度警察に注意を受けるとか…。何でも良いから兄貴に規制遵守って言葉の意味をちゃんと理解させるべきだとしみじみと思った。…例えここら辺じゃあ兄貴のスピードの奴なんてざらにいるんだとしても!
これじゃあ警察に捕まるどころか事故を起こしかねない。兄貴は気を付けていても前に遅い車がいたらどうするんだ。それから兄貴がバイク乗ってる時とかさ、特に危ないじゃん。
兄貴の大雑把な性格を運転に反映させたらいけない。だから運転が雑で危なっかしくなるんだ。
「着いたよハニー」
「…うん、ありがとう…」
「疲れた?大丈夫?」
「兄貴のせいだし…!!」
約10分のドライブの末辿り着いた駅。たかが10分なのにもうへとへとだ。兄貴の運転は乗ってるこっちが疲れる。
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