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休憩時間が終わってまた始まった試合。夕方だって言うのに、恐らく琉生目当ての観客の数は昼とそう変わらない。
試合中の琉生は挨拶する直前まで纏っていたいた空気から一転。またしても龍になったそいつ。何度見ても戸惑いそうだが、最初に見たときほどは驚かなくてすんで、昼の試合はそれどころじゃなくて見る余裕なんてなかったが今回はちゃんと目で追えてる。
遊び程度にしかしてこなかった俺でも分かる。琉生って強い方ってこと。しかもかなり上位に食い込むと思う。横や後ろにも目があるんじゃないかって思いたくなる位に反応が早いし、パスも的確だ。体がでかいのに、小さいって錯覚させる身軽さ。それから跳力もあって。フェイント入れるのも凄ぇうまい。叫んで言ってることも間違ってなくて、琉生を司令塔として軸に置いてるからこのチームって成り立ってるんじゃないかって思わされる。
これが全国を勝ち進んだ実力って奴?相手も弱くないと思うけど、点差は広がることはあっても縮まることはない。その上琉生のチームの方が攻めに回る割合は多い。
琉生がこんなに上手いって思ってもみなかったから正直、豹変っぷりも合わせて驚きを隠せない。でも、女子がキャーキャー言うのも分かるかもしれない。実際男の俺が目を離せなくなってんだから。
「すぅばる。まだ帰ってなかったの?」
「ぅえ…っ?!」
それにくぎづけになっていると、突然耳元で話しかけられた。見いってしまっていたのもあって、驚いて体が跳び跳ねる。耳をおさえて後ろを見るとコートを羽織った涼がいた。コートを着てるってことはもう帰るんだろうか。
「兄貴仕事終わったの?」
「まぁ、今日はそこまで大変なもんもなかったしな。帰るって連絡来てないから一応来てみたんだよ」
「へー。…つかこっちに来て大丈夫だったのか?昴流ちゃんとの距離とかさぁ」
「お前を囮にするから」
「ひっでぇ」
他生徒がいる中で俺の近くに来て大丈夫なのかとも思ったけど、そこは臣をカモフラージュに…、恐らく、臣が弟で迎えに来たとでも言って誤魔化すのだろう。2人って髪色は全く違えど顔は似てるからそれを疑う人なんていないだろうし。それで誤魔化しきれなかったら「囮」って言ったくらいだから臣も嘘に乗せさせるんだろう、きっと。
「そんでお前は?何なのその携帯」
「琉生ちゃん撮って姉貴と萌えを共有する」
「嗚呼…そうですか」
臣の返答に「相変わらずだな」と苦笑を零す。宣言通り臣のカメラは琉生しか捉えていない。じっとしてくれない的を追いかけることに必死と見た。
「琉生ちゃんマジで上手くてさ~兄貴知ってた?」
「嗚呼…『天才』だろ?バスケに関しては。そっちの業界では期待の星」
「マジで?!すげぇじゃんそれ」
「え…っ」
嘘、そうだったの?俺今の今まで全然知らなかった。ごめん琉生。全国優勝したと聞くまでスポーツ少年団的な部活だと思ってたことが今物凄く申し訳なく思い始めた。
「にしても…、ククッ、えらく普段と違うな」
コートで舞い、咆哮する龍を見てクツクツと涼が笑う。あのおどおどっぷりからは到底想像もできないそれが驚きを通り越しておかしかったようで。
「兄貴ネタに使うなよ…?琉生ちゃん泣くよ」
「人道的範囲内で弄るから。"バスケの時は格好いい"…な、クク…」
「うっわぁ、スイッチ入っちゃったよ…」
意地悪味のある笑い方に琉生の未来が見えた気がした。暫くこのギャップをネタに琉生は涼のSの矛先となるのだろう。頑張れ琉生。涼もさ、限度は考えてしてる…らしいからこれでも。
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