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ここ数日の朝生田情報は結構転がってて、部活をしている人は帰りの時間帯での遭遇率が高いのか、舞那ちゃんからも『朝生田らしき人を見かけた』という旨のことを伝えられた。それから他の陸上部の人がこそこそ話してんのが聞こえた。
皆の話を聞いた感じではあいつは今単独行動を取っているらしい。前とは違い仲間といたとはまだ聞いていない。
ただ、琉生からの情報とはー琉生が伝え忘れたんだろうけどー違ったところもあって。舞那ちゃん曰く、朝生田は結構な怪我を負っていたらしい。ちょっと距離をおいて見てもはっきりと分かるくらいには。
擦り傷ってより打撲痕が酷かったとか言っていたけど、それで想像するのは愁の怪我が酷い時。遠目に見て分かるとなると、あそこまでとはいかなくても近くで見ればかなり酷いものなんだと思う。とは言えあいつに会う機会なんて朝生田が学校に来ない限り俺はないだろうからその程度を確認しようもないけど。
…って、思ってたんだけどなぁ。部活帰りに、見つけた。街灯にもたれ掛かって携帯を弄っている赤色の物体を。俺やっぱ赤運悪い。とてつもなく。
それと、また別の意味でびっくり。舞那ちゃんが言っていた通りあいつは確かに怪我をしていたけど、想像していたよりも惨くて。
愁の怪我に近い…っちゃあ近いけど程度で言えばもっと酷いのかも。1回の喧嘩でなりそうにない、怪我が癒えないうちに何度も何度も繰り返したような。…もしくは、一方的なものか。肌は長袖で隠れてしまっているから顔しか確認のしようがないが、その肌の色が酷い、酷すぎる。青紫に変色している部分もあるように思える。唯一朝生田にとっての救いとなりそうなことと言えば、これだけの怪我があっても整った顔が腫れてないことだろうか。
「…狂ちゃん?」
「…あ、」
遠くからとは言え見すぎてしまったらしい。朝生田と目があってしまった。反射的にパッと目をそらしたが、時既に遅し。俺に気づいたようで地面を叩く音が近づいてくるのが聞こえる。
「久しぶりっすね。1ヶ月くらい行ってないと懐かしく思えてくるなァ…」
「ん、っ…?…っ」
俺の正面に立った人影。そいつの手が俺の頬に触れてきて、顔を上げさせられる。近くで見て、息をのんだ。近くで見れば見るほど、こいつの怪我は重傷で。正直、こうやってへらへら笑っていられるのが不思議なくらいだ。
「その、怪我…は、」
「怪我?…嗚呼、喧嘩っすよ。別にリンチじゃあないんで」
「…そう。凄ぇ痛そう」
「へぇ、"そう見える"んすね」
俺の感想にまるで朝生田は他人事だ。『他者からはそう見えるのか』という驚きも含まれているような言い方でもある。…俺変なこと言ったか?言ってないだろ。俺の感性が周りとずれてるみたいな反応すんな。
「俺ちょっと痛覚麻痺してるとこあるんすかね、きっと。痛いと思ったことがここ数年そこまでなくて」
「え、あ…そう、なのか…??」
痛覚の麻痺、痛みの慣れ。朝生田はへらりと笑ってそう言った。どうやら俺がおかしなことを言った訳ではなかったようだが、それはそれであまり笑えることではない。
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