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ー臭い…ー
アルコール独特の臭い、それに微かに混じる鉄の臭い。
意識を取り戻したとき、まず最初に思ったのはそれだった。その次に、二度もスタンガンを当てられた背中への痛みが襲ってきた。
頬に冷たい感触。今の俺はコンクリートがむき出しの床に横になっている状態らしく、その体勢のまま薄目で場所を確認する。昔のドラマとかに出てきそうな部屋だ。薄暗い部屋に唯一ある光はネオンライト。その光に反射する酒のボトルが一本、俺の視界からは確認できた。
「なぁ、愁?」
人の気配がないことを確認して、起き上がって隣でまだ床に倒れている愁を揺さぶる。けれども反応はなく、愁が目を覚ます様子はない。とりあえず携帯を、とズボンのポケットに手を突っ込んだが先まであったはずのものが消えている。リュックも見当たらない。もしかしなくても、奪われただろうか。喧嘩だけの頭じゃないとなると厄介だな。
「…汚ぇ…、何だここ」
部屋を見渡して、まずそう思った。ここは恐らく、奴等の溜まり場になっている場所の一室なんだろうが、物が散乱しすぎてる。愁が荒れてる時の部屋の状態に近い。床には割れた酒のボトルが幾つか転がってるし、中にはまだ中身が入っていたのであろう物があり、床を濡らしてる。誰かが暴れた後のような部屋だ。しかも、濡れているっていうことはつい先までそうだったってことになる。
ーあれ、これって…ー
キョロキョロと、暗い部屋の隅から隅までを見ていると、床に見覚えのあるものが転がっていて、拾って見てみる。ピアスのチャームには丁度良さそうな、小さな兎。それに繋がっているチェーンが途中で切れてしまっている。無理矢理切ったような跡はないから自然と取れたものなんだろう。そして、これと同じものを右耳につけてたやつを、俺は知ってる。
あいつーー朝生田だ。左の拡張された耳たぶに、ジャラジャラとこいつを付けていたのを覚えている。それがここに落ちているってことは少なからずここ最近、朝生田は一度はここにいたってことになるな。確か、最後に会った時にはつけていたから。落としたのはそっから今日までの3週間の出来事か。とりあえず、ポケットに入れとく。あんだけ毎日つけてたんならお気に入りだったのかもしれねぇし。俺だって好きなピアスのチャームがなくなってたら諦めきれなくて数日は探しそうだから。
ーなんだ、これ…?酒か…?ー
探索再開してまもなく。他と違い、違和感のある濡れ方をしている床を見つけた。他と同じで酒かとも一瞬思ったけど、それにしては薄い灰色をした床にしては濡れている部分だけ色が濃すぎるし、近くにボトルは転がってない。それに、ボトルがあったような筒状の濡れ跡もないから酒ではないんだと思う。
若干なら固有色も分かるんだけど…。部屋の照明が丁度届いていないのと、影になってるせいで分かりにくい。透明ではないのは確かなんだけどなぁ…。
「鉄……?」
ちゃんと見ればわかるだろうかと思って顔を近づけて見てみると、鉄の匂い。床からの可能性も疑ってみたが、どうやらこれはこの液体から発せられているものらしい。目を覚ましたとき若干鉄臭かったのはこれのせい?てことは、他の箇所もこいつで濡れてる可能性があるよな。起きてすぐ鉄臭いって感じる位だったんだから。
臭いの発生源が分かっても、色の方は確認できないから仕方なく、手でちょん、とつついてみて照明に当ててみる。ピンクの光が当たって多少本来の色とは違う発色の仕方をしたが、『赤色』であることは確認できた。
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