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相手が持ってる武器に気を配りながら1人ずつ確実に倒していく。ちゃんと愁が自分の間合いにいないとだし、室内ってのもあって動きにくく、かなり時間がかかってしまうが、ここは慌てたら駄目だ。
「っい…?」
2人目を倒したところで手に痛み。何度か当たっただけでもう拳が擦れてきてて、赤くなってる。昔は痛くなかったのになぁ…。自分が原因でなったにしろ、相手にやられて負った怪我にしろ、やっぱり痛みに弱くなってんのかな。それが果たして良いことなのかは俺には分からない。
痛みを感じることで体の限界が来る前にセーブをかけれるようになるのは利点だったのかもしれないし、自分のスタイルでやり通せなくなったのは欠点かもしれないし。
「流石最近行方眩ましてたとはいっても強ェよなァ…」
「…はぁ」
クツクツと、喉を鳴らして『リーダー』が笑いながら俺のことを称賛するが、こいつに褒められてもあんまり嬉しくない。一番手強いやつに言われても見下されてる感じがあるんだもん。
「けどさァ、もっと本気になろうぜ?ちまちまちまちまやってたら"先"と同じだろ?」
「手を、抜いてるつもりはないんだが」
これでも俺は結構真面目に、なるべく早く終わらせようと頑張っている。そりゃあだって犯されたくないし、愁が飛んでる間は守らないといけないんだ。そんな状況で油断する筈もないんだが、相手は手を抜いてるように見えたらしい。
けど、そういうなら俺だってもの申したいことがある。せめてお前ら武器を置いてくれ。それ警戒しながら動くってものすんごく神経使うんだぞ。
「けどなァ…昔の方がなァ……」
俺は真剣にやっていると反論するも、向こうはそれに納得いかないらしい。つまり俺が手抜いている様に見えるほど、こいつらが想像していたよりも俺はかなり弱いってこと。しかし現状互角なのだから、俺に強さを求めたらこいつらが不利にならないか。
それでも、その強いー中学生の頃ーの俺にこだわるってことは余程当時の俺に執着しているのか。あれか、過去の俺に勝ってこその仕返し、みたいなそんな感じか。
「嗚呼、成る程な」
「…あ゛?」
「お前を"切れさす"のが早ェわ」
ふと何か思い付いたらしく、にぃ、と嫌な笑みを浮かべたそいつが、そこら辺に転がっていた棒状の物を手に取った。見た感じ…兜割、とかだと思う。けれどもそいつは近距離戦用のそれを持っても俺との間合いを詰めることはない。そこからだとどう振り回したって俺には当たりっこないだろうに。
そいつのやろうとしていることを推測していたその時、そいつはそれを振り上げた。"ボールでも投げるみたいに"。
でも、手を離す間際に矢先が向いていたのは俺ではなかった。寧ろ俺の急所を狙うには下過ぎるくらいで。一体どこを狙ってるんだと考え、思い出した。背後にいる存在を。
「っ゛てェ……」
「…ヒュー。動体視力は相変わらずだなァ…」
気づけば足が動いていて、腕に柄がぶつかりじくじくとした激痛を覚える。唯一の救いはこいつが鞘の中に収まっていてくれたことか。金属棒を直でぶつけられて折れてない自信は流石にない。
「愁は関係ねェだろ」
痛みに耐えながら出た声は、自分が思っていたよりも低い声。自分が痛いのは許せた。でも、愁を、意識飛んで無抵抗な人間を狙うのは違うだろう。俺の反応が遅れていたら、愁のどこに当たっていた?手?胴?足?ーーそれとも頭?やって良いことと悪いことがある。そんでこれは、絶対に区別できないといけないことだ。
しかし、そいつは全く悪いことをしたと思っていないようで、俺の殺気も笑って流した。
「ほら、お前も守りながらじゃあだりィだろ?先に片付けた方がお互いのためじゃねェ?」
「……あ゛ァ?」
そこで完全に脳内に張られていたワイヤーがぷっつりと切れてしまった。愁をまるで床に落ちた塵を掃くような扱いをされて頭に来ない訳がなかった。
挑発だと分かっていても、反応してしまう。それは愁が俺にとってどれだけの存在であるかの現れのようなもので。相手が本気で言っていないんだとしても、俺を挑発するのが目的なんだとしても。愁を馬鹿にされんのは、それだけは許せなかった。
「殺すぞ」
湧き出てくるのは苛つきを通り越して殺意だった。こんな風に頭に来んのっていつぶりだろう。そう、滅多になかった気がする。
「ふは…、やってみろ…っよ…?!…ぐ、ァ…っ?」
そいつの顔面狙って兜割を投げ返して、相手が避けた隙に一気に間合いを詰めて無防備になった腹に拳を入れる。向こうは反撃を仕掛けてくるけど体勢が崩れた相手と俺じゃあ俺の方が有利で、相手の力が抜けている間に首に手をかけた。
「愁には、どんぐらいでやった。もっとか?」
「っ、つ゛…」
「なぁ、俺は、本気だぞ」
まずは、ここに来る前の仕返しを。どんどん首を締める力を強くしていく。相手の気道何て考えず、力任せに。俺の殺意が本物であると知らしめる。このまま息の根を止めてやろうか。愁はお前らが馬鹿にして良い奴じゃないと分からせてやるのも良いかもしれない。ふつふつと湧き上がる殺意が、ブレーキを無視してどんどん加速して、頭の中が真っ白になる。
「ふ、は…っ、相変わらず単純な奴だな…?」
「…っ、あ゛…?…っ、?」
そいつの息が細くなってきた時、ガツン、と後ろから衝撃。そっちに意識を持っていかれて手が緩んだ一瞬の隙に俺の手に触れていたものが消える。
ー邪魔くせぇなぁ…ー
複数人いるとどうしても邪魔が入ってしまう。やっぱり残りの1人を倒してから最後にこいつを"殺ろう"。そう判断し、ぐるりと体の方向を変えて鈍器を持っている、先後方から俺を殴ってきた奴を"潰す"ことにした。人は感情に動く生き物で、興奮状態だからか先よりも感じる痛みは弱く、体が一度それに気づけば突っ込むことへの警戒心は薄れた。
「…は、…」
やっと全員床に伏したところで若干の疲労。俺の体力がないとかじゃなくて、想像よりも強かった。最後まで残っていた位なのだからある程度強いことは覚悟していたが、武器が使えなければ弱いだろうという予想に反して素手でも強かった、と言った方が正しいか。武器だけの奴らばっかでもなかったようで。
「…ックク……、良いねェ…。やっぱお前強ェなァ…」
1人残ったそいつは、先までと同様余裕そうで、ムカつく笑みを浮かばせてまた俺を褒めてきた。こんな状況でも人をおちょくるのを忘れないそいつの声が胸糞悪い。
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