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1人残されたこの場所で、俺はただ泣く。
自分が気づこうとしていなかったから、否認めようとしなかったからこうなった。
俺がセックスに依存してる淫乱だからこうなった。
俺が、こんなのだから。俺がそうされてもおかしくない事してきたから。
自業自得。
その言葉がよく似合う。
「椿、椿ぃ…」
それなのに、また抱き締めて欲しいと微かに覚えている椿の温もりを追いかけている自分。
俺がもし、この感情にもっと早く気づけていれば、俺が初めっからあいつの言うことに頷いていたら、そうしたら結果は何か違っていたんじゃないかとか考えて。
最後まで虫が良過ぎる自分に殺してやりたいくらいに吐き気がした。
どの位泣いたのか、どの位椿の名前を呼んだのか分からない。
すごく長い時間そうしていたはずなのに、涙は一向に止まる気配を見せない。
寒くてくるまっていた布団のシーツには、俺の涙で大きく染みを作られていた。
寒い、欲しい。
こんな時でも体は、禁断症状が出たみたいに人の温もりに飢えている。
それが堪らなく嫌だと初めて思った。
自分が淫乱だと、体に言われているようで。
「つ、ばき…椿ぃ…」
「呼んだ?」
何十回目。何十何回目。数えきれない位に呼んだ名前。
それに対する聞こえるはずのない声が聞こえ、感じるはずのない温もりに体が包まれた。
すると、視界が明るくなり、布団の壁が無くなった分良く見えるようになった微笑むそいつの顔。
俺を嫌った筈のそいつが、俺に優しく微笑んでいた。
「ごめんな。位置を掴めたまでは良かったけど少し遠くて遅くなった。…一杯泣いちゃって…。大丈夫、もう寒くないから」
冷たく電話を切ったのが嘘みたいに優しく微笑んで俺の涙を掬って。
俺を安心させるように抱き締めて。
何で、何で。…意味が、分からない。
「…俺が嫌いになったんじゃ、ないの」
「……ん?何で?」
「俺はセックス出来るなら誰でも良いような淫乱で…っ!」
「"寒かった"んだろ?"誰かに愛されてると思いたかった"んだろ?…お前は淫乱なんかじゃないよ」
「でも椿怒って…」
「それ相手な。昴流泣かせやがってー…みたいな?…お前に怒る訳ないだろ、ばーか」
「淫乱なんかじゃない」
こんな俺でも、椿は表情1つ崩さずにそう言って、少しだけ気持ちが楽になった。
嫌われてなかった。
それが分かって、嬉しくて別の意味で泣きそうになった。
「つーかまず、こんなんで嫌いになる訳ねぇだろ。俺言ったよな?お前を守りたいって。お前をその"不安"から守ってやりたいって言った奴が、知らないやつとヤってるだけで逃げるなんてダサすぎだろ。…それって口だけってことでお前のことちゃんと見れてなかったってことじゃん」
「あ、あ……、」
「俺はちゃんとお前のこと見てるよ、昴流。嫌いになる理由なんて1つもない」
優しいその声が、ぽっかりと開いていた穴を埋めてくれる。
欲しかった貰えると思っていなかったその言葉で、目頭の辺りが急激に熱くなる。
「目が真っ赤。…愛されたがりで、寂しがり屋な可愛い狼君。俺はずーっとお前のこと見てるよ」
「んっ、ぅう…」
「ふふ、かぁいいほんと」
そして抱き締めていた力を強くしてポンポンと背を叩いてくる。それが心地良くてすりすりと椿の胸板に擦り寄った。
そうすれば椿はクスリと笑って、俺の重たい前髪を退かして涙が溜まった瞳に吸い付いてきた。
そして、良く見えるようになった視界で、涼は真剣な顔をして、俺に以前と似たような言葉を俺に言ってきた。
「愛してる昴流。…俺を信じてくれないか?」
今度は躊躇うことなく俺はその告白に頷いた。
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