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「あり、がとう…助けてくれて」
「別に」
あの後暫く騒がれたけどずっと無言で殺気を送り続けてたら俺の手を振り払ってどっか行ってくれた。
静寂を取り戻した教室。追い出せたことだし兄貴達の所に戻ろうとしたら絡まれてた奴が礼言ってきた。
助けた、訳ではない。まぁ結果的にはそうなんだろうが。
だから礼を言われても困るだけで、適当に返した。
「お疲れ様」
「…ん、」
兄貴達のとこに戻ったら俺が嗚呼やっている間に買ったのだろう出し物を食べている所だった。
兄貴がクッキーを俺の口元に持ってきて、それをもごもごと頬張る。
「これすーが作ったんやってなあ。ほんま器用よなお前。美味いわ」
「…ありがと」
「いつでも嫁げるで」
もっも、と美味しそうに頬張る要さん。
やっぱり、好きな人達に自分が作ったの美味しいって言ってもらえるのは嬉しい。
嫁げる…なぁ。あんま言われても嬉しいとは思わないな。俺男だし。
「安心しろって、こいつもう嫁ぎ先決まってんから」
「…リュウそれマジで言ってーー…」
「なにそれどういうこと!!」
「…リウンは少し音量下げろ」
要さんのセリフを遮るように吏さんの大音量が教室に響き渡った。
それに幸仁さんが深く溜息を吐いて吏さんの頭を叩いて黙らせる。
「あ、あああ兄貴…!!」
「あーん昴流怒らないでよ旦那さんいるって言った方が良かった?」
「そう言う意味じゃない…!!」
俺も俺で馬鹿なこと言った兄貴の胸倉を掴んで揺さぶる。
旦那でも嫁ぎ先でも無くて!!そう言うことじゃなくて!!!
「えー…でも昴流下なんでしょ?」
「な、な…っ!」
「だったら嫁じゃん」と兄貴が笑いながら言ってきてぷしゅーと頭上で湯気が立つ。
そうだけど、そうでもなくて!!!
お、俺が言いたかったのは…恋人とか、付き合ってる人がいるとか…そう言うので良いじゃんってことで…!
せめて普通に言って欲しかったと言うか…!
兄貴が男同士なの偏見無くいてくれて応援してくれるのは嬉しいけど、時々この人何の前触れもなく爆弾投下してくるからやだ。
「その人べっぴんさんなん?」
「凄ぇイケメン」
「ひゅー、すー面食い~」
「そ、そその言い方止めて下さい…!」
口笛を吹いて冷やかしてくる要さん。皆して止めてくれよ…!
俺そんなつもりないって。男なのに面食いって何。そりゃああいつ男の俺から見ても綺麗な顔立ちはしてると思うけどさぁ…!!
「まあお前が選んだんだから顔だけじゃねえんだろ。なら良いんじゃねえのか」
そんな中幸仁さんは冷やかすことなく真面目に返してくれる辺り、やっぱパパだなあって思った。
ここに幸仁さんいてくれて助かった。
「昴流ちゃんは幸せなの?」
「…聞きますかそれ」
今まで黙っていた吏さんが珍しく真面目に聞いてきた。
…幸せなのか、か。
改めて聞かれると、何かこっぱずかしい。
「…まあ、そうですね。幸せですよ」
小さくはにかむと、吏さんは「そう」と自分のことのように幸せそうに微笑んで俺の頭を撫でてきた。
「昴流ちゃんがそんな顔出来る位の相手なら何も言えないね。そいつの悪口1つでも言ってやろうと思ってたのに」
「リウンそれただの姑やん」
「うるさーーい!!」
「すーその人いつか紹介してなあ」
「…っ、は、はい」
吏さんを無視して話を進める要さん。
冗談交じりに言ってくるけど、何だかんだで皆俺のことを思ってくれていて。
俺が笑えるようになったこと。それを喜んでくれている兄貴達。
昔の俺じゃあ気付けなかった温もり。
「おい聞いてんのかカナメ」
「うるせえんだよお前は」
無視されて切れる吏さんをうるさいと殴る幸仁さん。それを見てケラケラと笑う兄貴と優さん。
いつ見ても吏さんの扱いは酷い。
「昴流、…今の顔の方が俺等は好きだぞ」
「…あり、がとうございます」
この5人に繋がりがあるなんて知らなかった中学の時から何らかの形で皆には世話になっていた。
皆、ずっと俺を心配してくれていた、今ならそれが身に染みて良く分かる。
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