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「ぅ…、ッ゛い…」
気が付き、再び頭の中がはっきりした時には、甘いバニラの、俺の好きな匂いに包まれていた。
体を起こそうとすると鳩尾あたりに激痛が走る。
久世に呼び出されて…脅されて…嗚呼、そうだ。何か良く分かんねえけど頭に血が上って…。
そっからはあまり思い出せれないが、俺あいつ蹴って殴ったんだっけ…?
それで、愁が止めに入った…のはうっすらとだけ覚えている。
何か愁に言われた気もするがそれは思い出そうとしても駄目だった。
「…寒い」
毛布に包まっているし、気温的にも寒くはない筈なのだがそう感じてしまうのは久世に言われたことが原因なのだろうか。
忘れたくても忘れることの出来ないその存在は、いつまで経っても俺を苦しめる。
自然と足はリビングにいる筈の涼の方に向かって進み出した。
涼と居れば嫌なことを忘れられると思ったから。
案の定リビングのソファでニュースを見ていた涼を、涼の隣に座って抱き締めた。
「…どうした?」
「さむい…ぎゅー…」
「久世か…。はい、ぎゅー」
ぎゅう、と抱き締め返してくれて、涼の温もりのお陰で少しずつ胸に焼き付いていた久世の言葉が、薄れていく。
「昴流、気にしなくて良いからな。大丈夫だ」
「ん…」
「ごめんな俺があいつをどうにかしとけば良かった」
涼のせいじゃない。
涼が教師って立場上、生徒である久世に"椿涼"としてあいつを拒絶するのが出来ないのは仕方ないことだ。
…なのに、涼が謝ってるのは俺のせい…?
俺が、涼に"謝らせてる"?俺が、こんなのだから。ちょっとしたことでこうなるから。
「ごめん、なさい…」
「何でお前が謝るの?」
キョトンとして、でも直ぐに表情を戻して俺の頭をよしよしと撫でる。
俺は悪くない、そう言うかのように。
「だって…涼は悪くないのに…!俺が、俺が"こんなの"だから…っ!俺が涼を謝らせてるじゃんか…!"そう言う空気"を作ってる!」
俺が、"弱い"から涼に"皆"に迷惑をかける。
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