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「…で、いつ髪きんの?女の子のルウちゃーん?」
「…殴るぞてめぇ」
少女と別れ、外の空気も堪能し今は部屋に戻っている途中だ。
あれからずっと愁は少女に言われたことをネタにからかってきやがる。
誰が女の子だ。そんなガタイでもねぇだろーが。
キ、と睨めば「ははー、怖いこわーい」と笑うそいつ。絶対申し訳ないと思ってないよな?
「それはそうと、切らないなら髪をあげるだけでもした方がいいかもね、右目隠れきってるし」
「ん…別に気になんねぇけど」
「馬鹿、目悪くなるよ」
顎下辺りまである前髪の一部を掻き分け、耳にかけられる。
暗かった視界が一気に明るくなり、眩しさで眉間に皺が寄り、目を細めた。
話題をそらされたことは触れないでおいてやろう。
「退院したら切ってあげるから1度家来なよ。どうせ美容院とかは行きたくないんでしょ?」
「…嗚呼、」
美容院は苦手だ。1度いったとき店員に何度も話し掛けられ、合わないと感じてからそれっきりだ。
必要以上に話し掛けてくる人は昔っから苦手だ。例えそれが仕事上仕方のないことだと分かってはいても苦手意識は無くならない。
それが俺が髪を切っていなかった理由のひとつでもある。
まあ、大半は面倒だからって理由ではあるのだが。
「…あれ、人いるな」
俺が使っている病室に戻ってきて愁がドアに手をかけ、開けようとしたとき小さくではあるが会話する声が聞こえた。
部屋を間違ったのかと思ったが、この部屋のネームプレートは俺の名前だ。
…と、なると
「すれ違った?」
「ん、そうぽいね」
俺達が外に出ている間に誰かが見舞いに来てくれて帰ってくるのを待っていたんだろう。
そう思い、再びドアの引き手を握り勢いよくドアを開けた。
「弟のことこれからも宜しく頼みます」
「嗚呼、分かってるよ」
ドアを開けると先程まで微かにしか聞こえなかった2人の声がよく聞こえるようになる。
両方とも聞き覚えのある声で1人は涼の声でもう1人はーー…。
「"兄、様"…?」
越えたくとも越えられなかった、"俺"を奪った一番上の兄だった。
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