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「…くくっ、お前が人に教える日が来るとはな」
「…ちょ、なに笑ってるんですか」
バイト中、いつものように最近あったことを優さんに話ながら手を動かす。
優さんは何がおかしかったのか俺が吉柳に勉強を教えたことを聞いて笑いだした。
「はは、悪い悪い。お前が愁以外に友人が出来たんだと実感して嬉しくてよ」
「…嬉し泣きならぬ嬉し笑いですか」
「そういうことだな」
友人1人増えただけじゃないか。
…けど、それだけで優さんが喜ぶってことは、中学の時すげぇ心配かけたってことだ。…本当、謝りきれないし、感謝もしきれない。
ーカランカラン…
鈴の音が鳴り、まだ数名しかいない店内に人が来たことを知らせる。
…嗚呼、もう8時過ぎか。そろそろ人が増えてくる時間だ。
「すっばるくーーん!!」
店に入ってきたのは常連さんの梓さん。
入ってくるなり俺の名前を叫ぶのはいつものことだ。
「昴流くん今日も可愛いー、あー癒されるー…」
「…ふふっ、癒されてください」
「きゃー、もー天使ー」
いつものように微笑んでカウンター席に座った梓さんの頭を撫でる。お疲れ様の意を込めて。
梓さんが来るのは仕事で疲れたときとかストレスがたまった時が多いから。
普段とは違う柔らかい口調と表情。俺はバイトの時…というか接客の時にスイッチが入るタイプで、ここでバイトし始めた時、その変わりように優さんが凄く驚いてたのを覚える。
俺がそうなるのはきっと餓鬼の頃、父の仕事の関係で大人と話す機会が多かったからで、7、8才くらいには自然と社交辞令が身に付いていた。それが今役に立っている…って感じだ。
「一家に一人はほしいこの癒し…。昴流くん今日私の家に泊まらない?」
「…くす、気持ちだけ頂きますね」
「えー、ざんねーん」
「残念じゃねえだろ。ここはクラブじゃねえんだよ。誰かと寝たいならそっちに行け」
内心梓さんの誘いに戸惑いながらも、営業スマイルで返した俺に残念そうにする梓さん。
そんな彼女の前に呆れながらに優さんがカクテルを置いた。
「ちょっと、私はそういう意味でいったんじゃないわよ。子犬が隣で寝てくれたら癒されるじゃない」
「持ち帰りしてる時点でアウトだってのに気づけよ」
…そこじゃないでしょ優さん。
いや、そこも大事だけど俺が子犬って…170cmあるやつを小動物に例えて良いものなんだろうか。駄目でしょ。子犬で170cmって怖いから。
「え、すぐるん昴流くんわんこよね?可愛いわよね?癒しよね?」
「…俺に同意を求めるな」
「そこは頷いてよ」
呆れ果ててる優さんを他所に何故か始まった俺が子犬らしいと思うところの熱弁。頼むから本人がいないところでしてくれ。
「昴流くんはね格好良いのよ…そう女子の人気の的になるくらいイケメン。だけど中学では最恐って言われるくらいの不良だった。ここまでなら可愛いにはたどり着かないわ、でもたまに見せる幼さや純粋さが昴流くんを可愛くしてるのよ……守ってあげたくなっちゃうの…。もうやだ可愛い……」
「…優さん」
「…空気だ空気。気にすんな」
狂気すらも感じるその熱弁を空気として扱う方が無理な話だと思うんですが。
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