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今日のバイトの時間は終わったので、家まで歩きで帰宅。
愁がバイクで移動してんのが楽そうだったから俺もバイクに乗ってみたいと思ってみたり。けど免許とるの面倒そうだからやっぱ良いや。別に歩けない距離でもないし。
エレベーターに乗って家の階を押す。因みにこのマンションは20階立てで、俺の家は15階。結構高い。
15階につき、扉が開いたのでエレベーターから出て家の方へ向かった。
今11時過ぎてるし兄貴は帰ってきてるはずだと思ってポケットから鍵は取り出さずにドアノブにてをかけようとしたその刹那…、扉が勝手に開いた。
…の、ではなく内側から開けられた。
「え、あ…」
ドアを開けたのは兄貴ではなく……もう一人の兄の方。何でこの人がここにいるんだろう。
…いや、いる理由なんて兄貴が呼んだ位しかないか。
何を言えば良いんだろう。こんばんは?お久しぶりです?元気でしたか?
涼に兄と父が俺をちゃんと見てくれていたと教えられ、教えられたその日からかなりの時間が経ち気持ち的な整理はほぼできているのだけど、それだけで今までの距離が縮まる訳がない。
兄と会話をすることを避けてきた俺は兄にどう話しかけたら良いのか分からないし、そして何より怖い。
…そう、怖いのだ。整理ができたって、誤解が解けたって過去に味わったあの空虚感は消えない。それを知っている体は…心は、分かっていてももしものことを考えて怯えてしまう。
また、兄に冷たい目を向けられるんじゃないかって怖くてしかたがないのだ。
「随分と遅い帰りだな」
「…今は、バイトをしていますので」
俺は怖くて兄の顔を見ることが出来なかった。声が、体が、震えそうになるのを堪えながら俯いて兄の言葉に返していく。
「怪我はもう痛くないか」
「…ええ、大丈夫です」
「…そうか」
「…椿さんから聞きましたが俺の手術、忙しいにも関わらず兄様がしてくれたみたいですね」
「…あの時はお前を助けようと必死だった。手の空いている医者に任せれば良かったのに、な。……冷静さに欠けるとは医者失格だよ」
忙しい兄が、仕事人間の兄が立場を忘れて俺のことで必死になってくれた。
それを兄自身の口から聞くことで恐怖が少しだけだが和らいだ。
「…お前が死なないで本当に良かったよ」
頭を兄の手々が包み込んだ。ぎこちなく俺の頭を撫でるその手は俺達の間にある距離を示すものであったが、とても温かいものでもあった。
「…昴流、ごめんな。…お前を不安にさせてしまってごめん。それに気づくのに凄く遅くなってごめん。…ごめん、ごめんな」
兄はそう何度も、何度も俺に謝った。
それは俺に許しを請うているよいうよりは、自身の今までを悔いているように聞こえた。
「今更言ったって、って思うかもしれない。…怒っても良い。だから、これだけはお前に言わせれくれ」
ー俺はお前を愛してるー
初めて言われたその言葉。"家族"であると実感できるその言葉。何度も何度も幼い頃に言われたいと願ったその言葉。
たった一言、されど一言。
いつの間にか先まであった恐怖は無くなっていた。
「…本当、今更ですよ"兄さん"」
気づけば俺の頬には涙が伝っていた。
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