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「買ってきたよーん。あれ、もう整理し終わったの?早っ」
「まーね。ちゃんとロイヤルミルクティとハーゲンタッツ買ってきた?」
「えっ、指定されてなかったよな!?野菜ジュースとトルコアイスにしちゃったよ」
「ジュースはともかくアイスのチョイスセンスどうした」
「トルコアイス最近のマイブーム」
「左様ですか」
まぁ嫌いじゃないからいいけど。てかあんまり食べたことないしな。
やることもひと段落したので、買ってきてもらったジュースとアイスで休憩することにした。
食器棚には十分に皿やコップが揃っている。シンプルに統一されているので、恐らく最初から各部屋に常備されているのだろう。
本校舎の方の寮でもそうだったけど、その食器にまでも貧富の差が現れていることにいっそ感心した。
コップと小さめの器を2つずつ出し、野菜ジュースとトルコアイスを半分に分ける。
アイスの伸びに悪戦苦闘しながらなんとか盛り付けた。やっぱ普通のにしてほしかった。言わないであげるけど。
それをトレイに乗せ、ソファにだらしなく腰掛けテレビのチャンネルをちゃらちゃら変えているトラの前のテーブルまで運ぶ。
「お待たせしました〜。アイスセットになりまーす」
「え?」
カフェの店員さん風に言って、分けたものを置いていく。
トラが拍子抜けしたようにぽかんと見てきた。
「ん?あ、今食べる気分じゃなかった?」
「いやいや、違くて、……これ、もしかして俺の分?」
「もしかしなくても君の分よ。こっちが俺の分だから」
わざわざ目の前に置いてあげたのに。ちゃんと2つずつあるの見えてないのだろうか。
変なことを聞く子だな。
ソファの真ん中に座っていたトラを押しやって隣に座る。
無邪気に喜んで食べ始めるかと思ったのに、戸惑ったような変な表情で見てきたので首を傾げた。
「どした?俺の分まではやらんぞ」
「違うってば。逆だよ。だってこれ、おれがツルに奢りって買ってきたのに……」
「うん。だから半分こ。俺一人で食べたって味気ないじゃん」
「……ツル……!!なんていい子なの!好き!!」
「うわっ、急に抱きつくなよ、もー」
ぎゅーっと力強く抱きしめられて痛いと怒りながらも、その背中を軽く叩いてやる。
トラの愛情表現は真っ直ぐでたまに鬱陶しいけど、やっぱり嬉しいものだ。
お馬鹿だけど素直で憎めないヤツだよなぁ。
ていうか、そもそもこれトラのお金で買ってきたんだしどっちかと言うと損してるのに。やっぱりお馬鹿さんだよな。
「アイス溶けるよ」と言って体を引き剥がし、感動するトラを横目にアイスにかぶりついた。
……これくらいで感動して俺をいい子呼ばわりするなんて、彼はいつもどんな酷い扱いを受けているのだろうか。
なんだかちょっと可哀想に思ってしまった。
その後、俺が昨日作っておいた夕食の残りをトラに出してやると、再び感極まって号泣しながら食べたことは言うまでもない。
——Z組に追放された時はどうしようかとかなり不安だったが、人懐こい同室者に恵まれて、なんとかやっていけそうだとようやく肩の力が抜けた気がした。
こうして、俺の怒涛の初登校日が終わったのだった。
……と同時に、俺のZ組での生活が本格的に幕を開けたのだと自覚し、心にずっしりと隠しきれない重みを感じたのだった。
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