アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
訝しげに見やると、トラはようやく口を開いた。
「朝ご飯……作ってくれんの……?」
「そうだけど……なにその仰々しい感じ」
「朝から味噌汁の香りがする……!」
「えぇ……」
わっと両手で顔を覆うトラについ引いてしまう。
彼が一体どういう心境なのかよく分からない。味噌汁でそんなに心動かされる?相当貧しいお家だったの?
不審に思いながらも、つっこむのも面倒になってきたので「和食でいいよねもう」と選択権を放棄させた。
「食べられるものならなんでも!」と言われて本当にこの子どんな苦しい生活してきたの……と心配になってきた。
「はいどーぞ。足りなかったらあとは自分で適当にやってね」
「とんでもない!朝からこんなにしっかり食べられるなんて幸せ!」
「いつも朝どうしてたの?」
「んー、食べないか、お菓子買ってったり」
「不健康……!」
「昨日から思ってたけどツルは料理すごいできるんだな。嫁に来てくれ」
「俺は嫁をもらう側じゃぼけ」
「えっ、じゃあ俺が嫁か……」
「なぜそうなる」
こんな不死身馬鹿な嫁はいらん。
考え込む馬鹿を無視して「いただきます」と手を合わせた。トラも慌ててそれにならって手を合わせる。
ご飯と味噌汁と卵焼き。
ほとんど手間もかけていない簡単なものだが、一口食べるたび美味しい美味しいと満足そうにするトラを見ると、やっぱり美味しいって人に食べてもらうと嬉しいものだ。
今度トラの好物聞いて作ってやろう。
なんて我ながら健気なことを考えて、それこそ本当に嫁みたいだと苦笑した。
甘くない卵焼きをつつきながら、そういえば、とトラを蹴り起こした当初の目的を思い出した。
「なぁ、俺弁当つくってるんだけどトラもいる?」
「べんっとう!!?」
「うわ汚っ、飲み込んでから喋れよー」
「んぐっ……ごめん、え、弁当まで作れんの!?」
「や、そんな大層なもんじゃないけど」
なんかもういちいち大袈裟だなこの子。
どんだけ手料理に飢えてるんだ。
それに普通にメシ作ってる時点で弁当作れるのも普通だと思うけど。弁当ってそんなグレード高いもんなの?さすがにおせちみたいなのは無理だけど。
大袈裟な反応にも慣れてきて、キラキラした目で作って!と興奮するトラに軽く返事をして味噌汁をすすった。
あ、弁当箱自分のしかないや。
大きいタッパーに2人分詰めてけばいいか。
弁当の中身を考えながら朝ごはんを食べてトラの話を適当に聞き流していたらいじけられた。駄々っ子か。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
39 / 90