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デスクに片肘をついてじっと見つめられ、つい視線をうろうろさせてしまう。
そこらの生徒と同じような出で立ちなのに、なんだか貫禄があって逆らえない雰囲気だ。
やっぱり彼は若そうに見えてここの保健医なのだろうか。まぁ彼なら生徒達にナメられることもなさそうだ。
彼が俺を呼び止めたというか力づくで留めさせたからには何か理由があるのだろう。
頭に保冷剤の冷たさを感じながら、黙って続く言葉を待つ。
「あの妙な噂の真相も槙から聞いてるから怪しんではいないんだけどな。ちょっと確認しとこうと思って」
マキ……佐野先輩か。
言い方から親しい感じが受け取れた。
でも事の真相を知っていたのは桐生先輩で、佐野先輩は昨日初めて知ったはず。
ずいぶん情報回るのが早いなと感心すると同時に、そんなに大きい話題なのかと不思議に思う。
平凡な一生徒の左遷理由なんて不良生徒達にはどうでもいいだろうに。
それより、確認とは一体……。
控えめに首を傾げてみると、彼は真剣な目でじっと見た後、カラッと笑った。
嫌味のない、爽やかな笑顔を向けられてぽかんとする。
この人はさっきからよく笑う人だとは思ったが、その都度受ける印象が全然違う。優しかったり、怖かったり、明るかったり。すごいな。笑顔の魔術師か。
なんて馬鹿みたいなことを考えた。
「うん、まぁ問題なさそうだな。虎介が懐いてるくらいだし」
「こすけ……」
「あいつ馬鹿だけど見る目はあるからな。まぁよろしくしてやって」
トラのことか。虎介って慣れてなくて一瞬分からなかったが馬鹿という単語ですんなり結びついた。
この人はトラとも仲が良いらしい。
いや、もしかしたらZ組の生徒達みんなと仲良しなのかもしれない。ここの生徒達は怪我とかよくしそうだし。手当てしないで自然治癒に任せてそうだけど。
この人に対する恐怖心もなくなったので、せっかくだし色々聞いてみようと身を乗り出し、俺から声をかけた。
「あの、先生はここの保健医なんですか?」
「は?」
「え?」
驚いたような反応に俺も驚く。
そして沈黙が降りた。
え?なにこれ。
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