アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
15
-
スピードは速い。俺でも気を抜けば付いていけないほどに。相手の死角を狙う技術力も大したもんだ。
だが。
「ぅわっ、」
「ちっと力が足んねェ、な!」
ヒュン、と飛んできた拳を止めた手で、そのまま殴るように押し返す。
耐えきれずバランスを崩した川島の腹めがけて蹴りを入れ込むと、呆気なく後方へ吹っ飛んだ。
途端、おぉーとギャラリーが沸く。
咄嗟に受け身をとったためダメージはそれ程でもなかったのか、すぐに立ち上がった川島は悔しそうに顔を歪めた後、へらりと笑った。
「やっぱ強ぇーっすわ。負けました」
「ま、俺に勝てんのはまだまだ遠いな。虎介はいけっかもしんねぇぞ」
「マジっすか。ちょっと今度奇襲かけてみます」
「おーガンバレ。じゃ、席はもらうぞ」
「はい、どうぞ……ってか、もう取られてましたね」
「は、」
苦笑する川島の視線の先を追うと、そこには堂々と席に座り、優雅にトンカツ定食を食べている翠がいた。
「翠ィィィ!!!」
「……なに?食事中なんだから邪魔しないでよ」
「人の席勝手に奪っといてなんだその態度はぁぁ!!」
「は?誰も座ってなかったから座っただけなんだけど。変な言い掛かりつけないでよヤンキーが」
「てめぇも中身は立派なヤンキーだろうが!」
「そんな下衆と一緒にしないでくんない」
「なぁぁあぁぁ!!!」
蔑んだ顔で最っ高にムカつくことを言う翠に怒りの叫び声をあげる。
川島はそんな俺に嫌にイイ笑顔で「ドンマイ」と言って去っていった。あいつ後で殴る。
翠から力ずくで席を奪い返そうとも思ったが、それをすると後がかなり怖いので諦めた。
物理的な喧嘩だったら俺の方が強いが、翠は精神的な方面からの攻撃がえげつなく、色んな意味で後遺症が残るためタチが悪い。
過去に何度かそれを味わった俺は最早コイツに歯向かえなくなっている。
ダセェが仕方ない。我が身が一番大事だ。
はぁーと盛大に溜め息を吐き、翠の隣に座るヤツに標的を移した。
「おい、どけ」
「はっ、ハイ、すんませんっ」
軽く椅子を蹴って凄むと、そいつは青い顔で簡単に席を明け渡した。
チッ、最初からコイツにしときゃ良かった。
舌打ちをして逃げるように去るそいつを見送り、どかりと椅子に座る。
「弱い人から横奪するとか人でなしだね」
「お前が言うな」
本当、こいつは人を苛立たせる天才だ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
52 / 90