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虎介にとって良いこと、な。
止まっていた手を動かし、残りのカレーをかき込む。
くそ、配分間違えた。ご飯が残っちまった。
若干テンション下がりながらも綺麗に平らげ、お盆を持って返却口へと向かう。
途中で邪魔になるヤツらを適当に蹴散らしていると、聞こえてきた会話にふと足を止めた。
「柳どこ行ったん?」
「保健室っつってなかった?」
「あぁ、なんか望月の見舞い行ってくるとか言ってたな」
「あ、あれか!川島がボールぶつけたやつ!ぶっ倒れてて超ウケた」
「つか柳マジであのチビに入れ込んでるよなー」
「な。なんなんアレ?デキてんの?」
「ぎゃははは!それはヤベェ!なくもねぇな!」
ピクリと眉が動く。
無意識に溜め息が出て、さっさと食器を返して学食を出た。
そいつらの会話は、馬鹿コンビでお似合いだとか、いや望月は意外と馬鹿じゃないだとか、望月の顔結構好みだとか、くだらない話で盛り上がっていた。
なんだかんだ1年連中は、眼帯チビを受け入れているということが感じ取れた。
ポケットに手を突っ込み、騒がしい廊下をダラダラ歩く。
ヤツらの会話が頭に残り、左耳のピアスを触りながら再び考えに耽った。
しかし翠に言われた通り馬鹿なせいか、結局なんの答えも出ないまま、すぐ考えるのに飽きて思考を止めた。
つ、と窓に目を向けると、向かいの渡り廊下に先程まで考えていた例の2人が歩いているのが見えた。
当然何を話しているのかは聞こえない、が。
虎介が大きく腕を振った際に持っていた包みが望月の顔面にヒットし、怒った望月が羽交い締めしたのを虎介が背負い投げするという、アクロバティックサイレント漫才を繰り広げているのを偶然目撃して呆れた。
息ピッタリじゃねぇか。ありゃデキてるとか言われても仕方ねぇな。
思わずフッと笑ってしまうのと反対に、胸ん中につっかかるものがどうしても拭えきれずにいるのを嫌でも感じてしまう。
虎介にとって良いこと、ならいいんだけどな。
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