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巻き込まれ回避不可
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図書室と書かれたプレートを確認してドアを開ける。
中を伺った俺はおぉ、と感嘆の声を出した。
意外にも広さがある。ずらりと本棚が並び、書籍も充実していそうだ。
ここの生徒達が大人しく本を読みに来るとは思えないのだが。なぜこんなにもしっかりした図書室があるのだろうか。無駄な設備投資な気がする。
この階には他に資料室とかしかないので、辺りは静かだ。
なんとなく忍び足になって中へ入る。
見渡してみても、整然としていて綺麗な図書室だ。
他の教室と違って落書きも血の跡もない。窓ガラスも無事だ。
少し埃っぽい空気と、古い本の匂いがする。
忘れられた場所のように、薄暗くひっそりしているが、不思議と落ち着く。
もしかして誰もここに足を踏み入れていないのだろうか。
それくらい、人の気配がない空間だった。
まさに避難場所にピッタリかもしれない。むしろ常時ここにいたいくらいだ。
しかし、埃っぽいのは少しいただけない。
まずは湿った空気を換気しようと、窓辺に近寄る。
見ると、窓枠にも埃が溜まっていた。これは掃除のし甲斐がありそうだ。
窓に手を掛けて引っ張るが、錆び付いているのか固くなっている。
意外と力の要る作業に四苦八苦しながらも、キキ、と甲高い音を立ててなんとか開けられた。
途端、外の空気が入ってくる。
爽やかな風を感じて、大きく深呼吸した。
古びた匂いも嫌いじゃないが、やっぱり新鮮な空気がいい。
これは全面換気が必要だな。
よし、と気合を入れて、順番に窓を開けにかかる。
当然のように全てが錆び付いているので、ひとつひとつ踏ん張って開けていかなくてはならない。これはかなり体力を使いそうだ。
ぐるっと全体の窓を見て、意外にある数にうんざりしそうになりながらも、時間をかけて開けていく。
何個か開けたころには息も上がり、腕が疲れて怠くなっていた。
だがあと少しだ。もう一踏ん張りでコンプリートだ。
このとき俺は、なにも全ての窓を開けなくても換気には充分だということにも気付かず、躍起になっていた。
一呼吸置いてから、目の前の窓に手を掛ける。
「ふんっ!んん〜〜」
ギシギシ嫌な音を立てて少し動くものの、疲れた腕では上手く力が入らない。
唸り声を上げて力一杯引っ張ってもなかなか動かず、限界を感じてふっと力を抜いた。
その瞬間、手を添えていただけの窓が、ガガガッ!とすごい音を出して開いた。
ギョッとして自分の手元を見る。
え、力抜いた瞬間に開いたんだけど。力加減の問題だったの?それともマジで何かしらの力が発動したのか……?
自分の手のひらをまじまじと見つめていると、頭上から声が降ってきた。
「……よっわ」
「っ!?」
ドッ、と心臓が跳ねた。
窓の上部に目をやると、俺のではない手が掛けられていた。
この手が窓を開けたのだと、瞬時に思い至る。
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