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「あんた、誰」
低く、脳に響くような声。
金縛りにあったように全身が固まり、頭の中で警報がけたたましく鳴る。
これは、やばい。
早く、逃げないと。
何がやばいかは分からないが、とにかく逃げなければならないと、本能的に思った。
しかし、同時に、もう逃げられないことも悟ってしまった。
トン、と、後ろから出てきた手が窓枠に置かれる。
大きく、骨張った綺麗な手。
もちろん俺の手ではない。
両側に手が置かれているということは、つまり、囲われているということで。
背中に人の気配を間近に感じる。
微かな息遣いが耳に届く。
さっきまで、全く人気を感じなかったのに。
観念して降参するか、力尽くで逃げ出すか。
あらゆる選択肢を頭の中でぐるりと巡らせたが、俺の判断は早かった。
束の間の逡巡の後、
俺は全身の力を一気に抜いた。
「っ、」
背後で息を飲む音がした。
崩れ落ちるように地べたに手をつき、兎跳びの要領で横に飛び跳ねて、囲いの範囲から抜け出す。
勢い余って前転して壁に衝突するという間抜けな展開を披露してしまったが気にしたこっちゃない。逃げるが勝ちだ。
転がってヨタヨタになりながらもなんとか立ち上がる。
やばい、目が回った。
でも早く逃げないと、捕まってしまう。
安定しない視界の中、逃げなきゃという一心で必死に足を動かす。
2、3歩踏み出したところで、ふと視界が真っ暗になり、思いっきり何かに体当たりした。
「ぶふっ!!」
「……お前、何がしたいの?」
「……え」
またまた頭のすぐ上から聞こえてきた声に、サーっと青ざめる。
ぶつかった顔を離し、咄嗟に何かにしがみついた手元を見る。
シワになるほど掴んでいたのは、制服のシャツ。
そこから恐る恐る目線を上げる。
「……っ!」
一番に視界に飛び込んで来たのは、鋭い強さを持つ瞳。
その中に、間抜け面をした俺が映っているのが見える。
怖いくらいに整った綺麗な顔が、すぐ近くで俺を見下ろしていた。
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