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ぼけっと見惚れていると、頭を鷲掴みされて引っ剥がされた。
我に返って慌てて距離を取る。
それを見た目の前の男は、片方の口端を歪めて笑った。
「は、猫みてぇ」
「なっ、何奴っ!」
しまった、混乱して武士みたいな口調になってしまった。
しかし特にそれにつっこまれることはなく、男は一歩踏み出し、さして遠くもなかった距離をさらに縮めてきた。
反射的に後退りそうになったが、ここで引いたら負けな気がして踏み止まる。
開けた窓から冷たい風が吹き込み、カーテンのはためく音と、紙がパラパラめくれる音が遠くに聞こえた。
ドクドクと頭に直接響くほど心臓が脈打つ。
周りの景色が一気に遠ざかって、気付けば男から目を逸らせなくなっていた。
近付く男の綺麗な黒い目。
無意識に息を止め、瞬きすら忘れて、その瞳孔に吸い込まれてしまいそうになる。
男の瞳が、獲物を見つけた獣のように光った。
「……っ、しーちゃぁぁあん!!」
「は?おい、」
プツン、と何かが切れたみたいに、
ありったけの声量で叫んでいた。
頭を抱えてしゃがみ込む。
ビビリだって思われたっていい。
本当に無理だ。こいつ、怖い。
あの真っ黒な目が、あの人と重なって。
その瞳に映ってしまってはダメだと、激しく警鐘が鳴る。
逃げないと、早く逃げないと。
その視界から、消えないと。
捕らえられて、壊れてしまうのに。
俺も、あの人も。
サァっと血の気が引いて、体温が失われる。
体が鉛になったみたいに重く、動けなかった。
しばらくそうしていると、ふいに溜め息が落ちてきた。
顔を上げるより先に、バサリと何かが頭に被さり、視界が真っ暗になる。
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