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「!!?」
突然のことに一瞬パニックになる。
溺れそうになりながら、光を求めて腕を振る。
被さっていたものが落ちて視力が戻り、ホッとすると同時に脱力した。
見ると、被さっていたのはブレザーだった。
はっとして顔を上げたが、そこには誰もいなかった。
慌てて視線を巡らし、長机の方へ歩いていく男の姿を見つける。
シャツだけになっている姿から、俺の手元にあるのはあいつの物だとすぐ分かった。
なんとなく微妙な気持ちになりながら、それを持って立ち上がる。
少し迷ってから、男の後をついて行った。
日が落ちてきたのか、電気のついていない図書室はさっきより暗い。
外からの冷たい風に寒さを感じて、腕をさすった。
男は椅子に座ると、机の上の本をパラパラめくって読書し始めた。
数歩離れたところで足を止め、どうしたら良いか分からず男の様子を伺う。
目を伏せると、長い睫毛が影をつくる。
長い指がページをめくり、心地良い音が鳴る。
静かに本を読む横顔は、彫刻のように綺麗で、またしても見惚れてしまった。
……って、何をさっきから振り回されているんだ俺は。
人の恐怖心煽っておいて突然読書し始めるとか奇行すぎだろ。脈絡のない放置プレイやめてくれ。
完全に相手の雰囲気にのまれてしまっている自分に気付いて、ブンブン首を振る。
正直縮こまってしまうほどビビっているが、身体中からありったけの勇気を振り絞って一歩、男の方へ足を踏み出した。
「……あ、あの」
「逃げねぇの?」
「え、」
掠れながらもなんとか声を出したとき、被せるように静かな声音で遮られた。
本に向けられていた視線がチラリとこちらを向く。
つい持っていたブレザーを握る手に力が入った。
それを見てか、男は鼻で笑った。
「怖ぇーんだろ?見逃してやるっつってんだよ」
言いながら、目を細めて俺を見る。
高圧的な態度にも見えるが、なぜだか自嘲的な発言のような気がして、握りしめた手を緩めた。
理由は分からないが、どこか投げやりな態度の男に、疑問と不満がムクムクと湧き上がる。
ここで逃げたら負けだ、と
本能が告げていた。
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