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姿勢を正し、手首を返して、握手してくるトラの手を掴んで止める。
真面目な顔をする俺に、トラはきょとんとした。
「何度も言うけど、俺喧嘩できないし。チームとやらにも入らないから」
きっぱり言い切ると、俺の本気度が伝わったのか、トラは一瞬表情を曇らせる。そして得心したようにうんうんと頷いた。
ようやく分かってくれたかと安心したのも束の間。
「チームっつっても喧嘩ばっかしてるわけじゃないから。嫌なら前線には立たせねぇし。とりあえず集まりに顔出すだけでもしてくんね?」
「……えー」
眉尻を下げて下手に出られると弱ってしまう。
急にしゅんとした犬みたいに見つめられて、無碍にも出来ず言葉に詰まる。
喧嘩ばっかじゃないと言っても、不良のチームなんて他に何をするんだ。
慈善活動でもしようものなら天地がひっくり返るほどの衝撃映像だ。スプラッタ映像なみの破壊力で衝撃を受ける。これまでの偏見を土下座で謝って全力でその活動を応援しよう。
しかしさすがに彼らはそんな慈善活動に精を出すようなボランティア精神を持ち合わせた集団ではないだろう。
平々凡々な人間が関わって得するものじゃない。
なおも渋る俺に、トラは「お願い!」と両手を擦り合わせる。
俺より図体でかいくせに、背を丸めて見上げてくる瞳に信念が揺らぐ。
犬耳が、へたっている犬耳が見える。今にもきゅーんと鼻で鳴く声が聞こえそうだ。
数秒その視線と戦ったが、ポキリと折れてしまった。
「……分かったよ。とりあえず様子見に行くだけな」
「!! やった!約束な!!」
尻尾を振って喜ぶワンコに、うんざりしながらもまぁいいかと思ってしまう。
ちらっとメンバーとか雰囲気とか見て距離感保てばいいだろう。どうせ喧嘩の戦力にはなり得ないのだから、存在感消して空気になっていればいい。
それで納得してくれるなら妥協するか。
満足げにニコニコしてご飯を掻き込むトラを呆れ顔で眺め、ふと疑問が浮かんだ。
抗争に参加しろだとかチームに入れだとか、なんでそんなに俺を巻き込みたがるのだろう。
悲しいことにどっからどう見たって喧嘩なんてできそうにない外見なのに。
俺が参加したところで、こいつらにはなんの利益にもならないのに。
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