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「なーにボサっとしてんのさ!食い終わってんなら持ってこーい!」
「あ、うん。ごめん」
どうやら空の茶碗を見つめて固まっていたらしい。慌てて食べ終わった食器を重ねて立ち上がる。
振り返ると、両手泡まみれのままトラが仁王立ちしている。
服に思っきし泡付いてるけどいいのか。
相変わらず馬鹿っぽいトラになんとなく安心しながら、トラの横を通ってキッチンへ向かおうとしたとき、ぐっと腕を掴まれた。
え、ちょっと泡……。
「ツル、やっぱ嫌か?」
「え、まぁ泡まみれの手で触られんのは嫌でしょ……」
「違くて!チームの集まりに出んのは嫌かって聞いてんの。泡はごめん忘れてた」
「あー……」
俺から手を離し、悪いことをした後の飼い犬のように気まずそうな顔をするトラ。
俺がぼーっとしていたのを勘違いしたのか。
確かにチームの集まりとやらに出るのは意味分からんし出たくはない。そもそもそれに関わること自体が嫌だ。
俺は平穏無事に学生生活を送りたいのだ。
その考えは今でも変わらないが——……。
見えない犬耳をしゅんと垂れ下げるトラの頭をわしゃわしゃかき混ぜる。
俺の行動が予想外だったのか、トラは目を大きくさせてされるがまま固まった。
なんかもういいや。
気にしすぎるのはやめよう。
トラはこうして俺と友達になってくれた。
その友達が、自分の周りの人達を紹介してくれるって言うんだ。何も逃げる必要はないじゃないか。
不安げに瞳を揺らすトラに、ニカッと笑ってみせた。
「大丈夫。出るよ」
「でも……」
「そのチームってやつは、トラにとって大切なものなんだろ?」
「……うん」
「それを俺に見せたいって思ってくれたんだよな。友達の大切なものは、俺も大事にしたい」
トラの髪の毛に突っ込んだままの手に、ぐっと力を入れる。
頭を沈めさせて、少し上にあった目線を無理矢理合わせた。
「誘ってくれてありがとう。嬉しい」
「ツル……!!」
照れながら言った俺に、トラは感極まったように飛びついてきた。
わ、ちょっと待て食器が……!
焦ったのも束の間、ガシャーーンと激しい音が部屋中に響き渡った。
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