アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
14
-
無視して先に食べ始めると余計にうるさくなるので仕方なく手を止める。
デスクの配置は、俺の左隣が有野先生、正面が大木先生となっている。
Z組での担任歴はこの中では俺が最も短く、当初は先輩とも言うべきこの2人に色々教えてもらうためにこの配置となったわけだが、今となっては俺がこの2人のお目付役となってしまっている。
もちろん教えてもらうこともそれなりにはあるが、生徒達よりもこの2人の相手をする方が面倒だったりする。
有野先生はいそいそとピンク色の可愛らしい保冷バッグを取り出した。彼はいつも手作り弁当を持参していて、そこはたいしたもんだなと感心している。
大木先生はいつもコンビニのサラダチキンと茹でブロッコリー、バナナだ。毎日全く同じメニューで見てるこっちが飽きる。
全員用意ができたのを確認して、有野先生が大げさに手を合わせる。
「それでは、いっただっきまーす!」
「いただくぜェ!」
「いただきます」
ちなみに3人の声が揃ったことは一度もない。
見た目の割にちまちまと食べるのが遅い大木先生を前に牛丼を食らっていると、横から袖を引っ張られた。
目だけを向けると、有野先生が興味津々といった表情で体ごと俺に向けている。
彼の関心事はだいたい予想がつく。
「ね、新しく入った子どう?やってけそう?」
「あー…まぁ、大丈夫じゃないっすかね」
「ふーん。どんな子なの?この前話しかけそびれちゃってさぁ」
どんな子と聞かれ、箸を止めて望月を思い浮かべる。
普通と答えようとしたが、一言で普通と言うには気が引けるくらいには変なヤツだった。
だが周りのクソ不良どもに比べたら霞む程度の存在ではあるか。
「……普通ですよ」
「いやなに今の間!絶対普通じゃないでしょ〜。てかここでやってけそうって時点で普通じゃないでしょ」
確かにそりゃそうだ。
とは思ったが、担任と言えど俺はほとんど授業中しか接点がないわけで、望月がどんなヤツかなんてまだ把握していない。
事前情報も何もなく生徒を受け入れなくてはならないのは、結構やっかいなものだ。
一応担任として、全生徒がZ組に馴染めるように上手いことしてやらなきゃならないのだが、それはほぼ不可能に近い。
悪ガキの巣窟と成り果てたここでは、同じく悪ガキでないとやっていけない。もともと家柄と勉強しか取り柄のないボンボンは、Z落ちした時点で自主退学するのが常だ。
望月を最初に見たとき、完全に後者だと思った。
どうせならZ落ちを通告された時点で逃げ出せば良いものを、なんの意地か知らんが移動の手続きまでして、無駄なことをするなとさえ思った。
こいつも結局次の日には退学届を出すんだろうなと高を括っていたのだが。
登校初日の威勢の良い挨拶を思い出して、ふっと笑みが溢れた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
79 / 90