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ここZ組で一番厄介なのは、分かりやすい不良ではなく、何をしでかすか分からない人間だ。
壮絶な過去を持っていながら、表面上ヘラヘラしている望月にはそれに近い要素がある。
そう思いながらも、思案顔の有野先生を見てまずいなと思った。
下手すれば有野先生は望月を排除しようとするかもしれない。彼は普段キャピキャピしてふざけているが、不要なものは容赦なく切り捨てる冷酷な男だ。
この3人の中で有野先生が一番Z組の担任歴が長い。彼はここをとても大切にしている。だからこそ、Z組に影響を与えそうな不穏因子に警戒しているのだろう。
少し考え、引き出しに常備してある苺ミルク飴を2つ取り出し、有野先生のデスクに置いた。
「今はまだ見守ってやって下さい。あいつがどういう人間かは、背景だけじゃ分からない。少なくとも、今すぐどうにかしなきゃならない人間だとは、俺は思いません」
そう言い切った俺をぽかんと見上げた後、苺ミルク飴を複雑な表情で見つめ、諦めたように頷いた。
「……みっちゃんがそう言うなら。任せるよ」
「ありがとうございます」
「ただし!少しでも異常を感じたらすぐに報告すること!隠したらタダじゃおかないからねっ」
「はい」
内心ホッとして、有野先生の言葉に素直に頷く。
苺ミルク飴はもちろん俺の好みじゃない。有野先生のご機嫌取り用に用意しているものだ。
と言っても、モノで釣れるほど彼は単純ではない。あげるのは、俺の気持ち次第だ。
だから、飴を使った俺の本気が伝わったのだろう。思っていたよりあっさり身を引いてくれたのはありがたかった。
ひとまず一件落着、と次の授業の準備をしていると、「あと、」と低く続ける有野先生に手を止めた。
「柳虎介。彼のことも注意して見てやってね」
「……はい」
一瞬なんのことかと思ったが、すぐにハッとして神妙に頷いた。
有野先生が一番心配しているのは、そのことだったか。
俺は当時本校舎のS組担任だったので不良生徒達とは縁がなく後から聞いた話だが、柳は中等部のとき同室者とのトラブルで荒れたことがあったらしい。留年したのも、それが原因だそうだ。
——その時の経緯が、今の状況と酷似している。
そのことに今更ながら気付き、一瞬背筋の凍る思いがした。
考えすぎだとも思うが、警戒するに越したことはないだろう。
有野先生の厳しい目線を受け、改めて気を引き締めた。
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