アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
いざ、牢獄へ
-
都会から少し離れた山奥に、堂々と佇む巨大な学園がある。
燈桜(とうおう)学園。
財閥やら大手企業やらの息子が教養を深め、同時に経済的ネットワークを広げるための隔離された世界。
幼稚園からのエスカレーター式で、全寮制。もちろん受験で入る外部生も多少いるが、ここの生徒たちは明らかに世間一般の学生とは程遠い生活を送っている。
この学園では、家柄や成績が良い順にS、A、B、Cとクラスが分けられる。
が、もうひとつ、外部ではあまり知られてはいないが、Zというクラスが存在する。
アルファベットの最後、Z組。
このクラスだけは主な校舎から結構離れた場所に、専用の校舎が設けられている。
それも、豪華で煌びやかな本校舎とはかけ離れた、オンボロ——とまではいかなくとも、古くて質素な校舎だ。
周りも手入れがされておらず、雑草ボーボーで木々が空を覆い隠している。なぜだかここの周辺はいっそう暗く翳っているように見える。
さながら恐怖の館のような佇まいだ。カラスの鳴き声が不気味に響き渡っている。
この扱いから分かるように、ここに集まるZ組の生徒は、不良や問題児、落ちぶれた者ばかり。
彼らの家柄や学園側の体裁などといった大人の事情により、退学させるわけにもいかずしかし他のお坊ちゃん達に悪影響……というわけで、こうして離れに専用校舎(一部からは牢獄と呼ばれている)を建て、そこに面倒な奴ら全員詰め込んでとりあえず解決ということにしたそうな。
何も解決していない気がするのは俺だけか。
俺は両手に大量の荷物を抱え、下品な落書きや何か考えるのも恐ろしい跡が点々と壁に残された、不気味にそびえ立つ校舎を目の前に立ち尽くしていた。
この前まで過ごしていた校舎との差に顔が引きつる。
なんだこれは。もはや別世界の異物じゃないか。こんなものがこの学園の敷地内にあっていいのか。どうせ作るならもっと違和感ない程度にちゃんと作ってくれよ。
しかし先日風紀に現行犯で逮捕されちゃった俺は、当然文句なんて言える立場でもなく、AからのZ落ちに従うしかなかった。
というか、あんなサスペンス的事件現場を抑えられたのにZ落ちで済んだというのが意外だ。普通なら退学どころかガチで通報レベルじゃなかろうか。
まぁ、ここ追い出されたら俺は行き場がないからありがたいんだけれども。
入学してから初めて目にしたZ組専用校舎に、俺はそのありがたみを失いかけている。
……もしかして、退学や通報よりZ行きの方がはるかに身体的・精神的損害が大きいということなのではないだろうか……。
グガァーァと雑音のように響いたカラスの鳴き声に過敏に反応して、ゴクリと唾を飲み込んだ。
いや、実は不良とかはそんなに怖くないんだ。俺だってちょこっとヤンチャしてた時期あったしね。
何が怖いってそりゃもうこの得体の知れない雰囲気だ。
絶対何か見てはいけないモノ出るでしょ!住み着いてるでしょ!
ここ入ったら取り憑かれてしまうんでないの!?
も、もしやZ組の生徒って……いやいや、考えるな。みんなちゃんとした不良にすぎないはずだ。
俺はぶんぶん頭を振って余計な考えを消し、恐る恐る校舎へ足を踏み入れた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 90