アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
「おい」
「ぎゃっ!!」
校舎に入って数歩、低い声とともに肩を掴まれ飛び上がった。
近くに人がいるとは思ってなかったからついビビってしまった。
掴まれているということはつまり人間だ。生きた人間だ。足音がしなかったとか気配がなかったとか関係ない。初めて足を踏み入れる校舎に気を取られて気付かなかっただけだ。
うるさくなる心臓を押さえてなんとか落ち着かせる。
ギギギ、と錆び付いたロボットのように後ろを振り返ると、視界に入ったのは、
ぼさっとした黒髪、
その長めの前髪の隙間から見える目は、整ったアーモンド型。
端整な顔立ちながら気怠い雰囲気を纏った、長身の男がいた。
しかし着ているのは、白衣。
こ、これは……
「お、おば、おばばば」
「あ?なんだどうした」
「すみませんごめんなさい何もしませんから助けて下さい成仏して下さいぃぃぃ!!」
「……はぁ?」
暗い理科室。
そこに浮かぶ白い影。
ホルマリン漬けの生物。
奇妙な人体模型。
散乱する実験器具。
床一面の赤い水たまり……
「それはこの前の俺の状況!!」
「大丈夫か、お前……」
つい先日の悲惨な状況を思い出して頭を抱えた。
すると目の前の人物は憐れむような視線を俺に向ける。
その視線を受けてようやく冷静になってきた。
俺を呼び止めた人物を改めてまじまじと見る。
良かったちゃんと生身の人間だ。影がある。
「新しくZに移動してきたの、お前だろう?俺はZ組の1年担任、黒崎だ」
「あ、ハイ」
「まず色々説明がある。ついて来い」
そう言って黒崎先生はスタスタと歩いていき、俺は少し安心してそのあとを追った。
風紀に本校舎を追い出された時にZ行きを告げられただけで何も説明がなかったから、ここへ来てどうすれば良いのやら分からなくて不安だったんだ。
Z組の担任を務める人間は只者ではないとの噂だったが、案外普通の人っぽいしちゃんと案内してくれるようで一安心だ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 90