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黒猫は日だまりに微睡む1
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きゃあきゃあと女子の塊があってその中心にはゆるふわパーマの金髪イケメンがいる。そいつをじっとりと睨みながら黒髪にキューティクルの綺麗な少年、春海はグルグルと低く唸った。
「あいつばっかりあんなにモテて羨ましい...妬ましい...」
「そう言うなよハル。あれは昨日今日に始まったことじゃないだろ」
「そうだけどさ...やっぱりムカつくもんはムカつく」
「はは...ハルも飽きないな」
深い青みがかった黒髪の雨夜は春海を横目で見やってスマホに視線を戻した。
「...クールぶってるけどお前だって大概じゃねぇか」
「日向を隠し撮りして毎日それ眺めてニヤニヤしやがって気持ち悪いわ」
「は?ハルと一緒にしないでくれる?日向は神聖な存在なの。サタンなのわかる?」
「お前の例えってなんか微妙におかしいところあるよな...そこは神とか天使とかって言うんじゃないのか...」
やれやれと春海は溜め息を一つ吐いて首を振った。
と、
「ふい~...やっと解放されたよ~」
金髪のイケメンである天子がやたらといい笑顔で春海と雨夜の輪に無遠慮で入ってきた。あからさまに嫌そうな顔をする春海の睨みは効いていないようだ。
「今日もご苦労なことで。いいですね、イケメンは女の子たちに囲まれちゃって」
「え~!僕は全然嬉しくないよ~。だってどんなに可愛くってもあの子たちはハルちゃんには敵わないもの」
「それがよくわかんねぇんだよ!オレと女の子は全く違うだろうが!」
うーんと天子は考える素振りを見せ春海に視線を向けるとにっこりと、女の子なら、男でさえドキリとするような形のよい笑みを浮かべた。しかし春海には効かなかったようでフンと鼻を鳴らして顔を逸らされた。
「テンシ、そんなテクニック使ったところでハルには一切通用しないぞ諦めろ」
「むー...これもダメか~...って言うか雨夜くん何回も言ってるけど僕は”てんこ”だから!間違えないでよ!」
「間違ってないだろ。そうとも読むんだし」
「そうだけど...そうじゃないんだって。わかってよ!苛めないで!」
「いいぞヨル!もっと言ってやれ!」
イケメンでモテモテの天子を苦手とする春海にとって天子の嫌がる姿は見ていて清々しいの一言に尽きる。全力で乗るのが常だ。
「ハルちゃんも酷いよ~...僕傷付いちゃう」
うるうるとタレ目がちな空のように澄んだ水色の瞳を潤ませて春海を見つめればそういうところが嫌いと今度こそ機嫌を損ねてしまったようで、気が付いた天子が慌てて春海に謝る。右隣に座る春海と真後ろに座る天子の仲の良い(?)喧騒をどこか遠くで聞きながら雨夜は春海の向こう側をジッと見つめた。向こうでは白い頭がくるくると楽しそうに周りを取り囲む男女を見回している。
「日向、楽しそうだな...」
日向は、雨夜たちと同クラスの人気者である。底抜けに明るく小さい身体ながら頼もしいリーダーシップを持っている。運動部からの熱いラブコールに応えて休日は試合の助っ人にもよく出動する”愛されキャラ”。そんな日向に陰キャラ代表の雨夜は強い憧れを抱いていた。それこそストーカーをしてしまう程に。 太陽のように眩しい日向に雨夜は中学2年に同じクラスになってから高校2年の今までに一度も話したことがない。真逆な立ち位置に対する恐れ多さやストーカーをしている後ろめたさからがあるからだ。話してみたい、でも嫌われそうで怖い、女々しい感情に日々悩まされ雨夜は今日も無音のシャッターを切るのだった。
「雨夜くんまた隠し撮りしてる~」
いつの間にか仲直りしていたらしい天子と春海がこちらをジト目で見ていた。
「...仕方ないだろ。話しかけるのが怖いんだから」
「そこだけ聞くと可愛いげがあるんだけどな。だからってやることが犯罪スレスレで、お前関連でマイナスなインタビュー受けるのはごめんだぜ」
頭の後ろで手を組ながら春海は大袈裟にため息をついた。
「そのときはいつかやると思ってました、って言っといてくれよ」
光のない真っ黒な目で春海を見れば春海は小さく震えた。
「そんなに日向くんと話したいなら怖がってないでドーンとぶつかっちゃえばいいのに」
天子は空気が読めない。雨夜の気苦労なんてどこ吹く風だ。
「おーい日向くーん!」
「ばっ何やってんだよテンシ!!」
おいでおいでと天子が囲まれている日向を無理矢理呼ぶと日向は嫌な顔一つせず周囲に断りを入れこちらに小走りにやって来た。とてとてと走る様は小さな子どもを彷彿とさせる。雨夜が逃げる前に日向は天子の真横にやって来た。
「おはよー天子!それに春海も...雨夜も。えっと、用件はなんだ?」
「僕じゃなくってこちらの雨夜くんが日向くんに用があるんだって」
「雨夜が?どうしたの?」
「い、いや、あの、...その、べべ別に、用事は...ないです」
「え?」
「んもー...雨夜くん恥ずかしがり屋だから...日向くんとライン交換したいんだって~」
「あぁなんだそんなこと!そういえばまだ交換してなかったよな。悪い悪い...登録するから教えて?」
こてんと音がするように小首を傾げて日向が小さな手では少し余るスマホを握りしめる。雨夜はそんな日向に悶絶し叫びたいのを我慢しながら断れるはずもなく日向のラインを登録した。名前が表示されたのを確認していると予鈴が鳴り、じゃあ今度連絡するからと爽やかな笑顔を残して日向は自分の席に戻っていった。それを夢心地に見送って雨夜は一日中日向とどんな風にメッセージのやり取りをしたらいいのか、その事ばかりを考えてあっという間につまらない授業を終えた。
ふわふわとした足取りで帰宅したものの今度は地獄でも見てきたかのように顔を真っ青にして雨夜は頭を抱えていた。スマホを両手に握り締めながら睨み付ける画面に表示されているのは”日向”の文字。そう、何を隠そう雨夜は思い付かなかった。
「何て送ればいいんだ...」
天子のおかげでラインを聞いたもののいざメッセージを送るとなると話が変わる。大切な日刊日向観察を放棄してまでイメージトレーニングしたのに結局何も浮かばなかった。
「ヤバい変な汗出てきた...どうしよう、」
頭をフル回転させて必死に言葉を打ち込んでみるが納得いかず書いては消すを繰り返す。雲の上の存在だと思っていた人にどうして簡単にメッセージを送れるだろうか、いやできない。...なんて悠長に反語使ってる場合じゃない。
「うわぁ~...」
「ぎゃ!?」
項垂れていると突然スマホが震え出した。誰かからメッセージが届いたようだ...って
「ひひひひひ日向からだあ!」
画面には日向からのメッセージが入っている。開いていたせいもあって相手にはもう既読が付いているだろう。
「ヤバい、早く返信しなきゃ...!」
既読スルーされたなんて思われたらそれこそこの世の終わりだ。よもや自分が既読スルーに怯える日が来ようとは思わなかった。
「とりあえず、」
日向からのメッセージはこうだ。
日向:届いてる?へへっ早速送ってみた!改めてよろしくー!
文章からも日向は気さくでろくに話したことのない雨夜にも怯んだ様子はない。しかし、これなら返信は簡単そうだ。春海と天子とやり取りをするときからは比べられないほどのスピードで文字を打った。
ヨル:こちらこそよろしくお願いします!
フレンドリーに接するなんて無理。10回推敲して震える指で送信した。怖い。通知が来てメッセージを確認して返信を打つ。その時間が酷く恐ろしい。画面を見ていることが辛くてアプリを閉じる。けれど、やっぱり気になってまた開く。開く閉じる開く閉じる開く閉じる。そうこうしているうちに、実際には間もなく日向から返信が来た。
日向:固いなー!そんなに固くなるなよー(笑)
ヨル:ごめん。あんまり話したことないし緊張しちゃって...
日向:確かに中学から一緒なのにほとんど話したことないよな。でも気にすんなって友達なんだし敬語とかなしで!
ヨル:友達...!嬉しくて泣きそう。よろしく!でいいのかな
日向:もちろん!俺も雨夜と友達になれて嬉しいよ。そうだ雨夜に質問していい?
ヨル:質問?いいよ
友達、いい響きだ。泣きそうと入力しながら泣いた。あの日向と、天上人の日向と友達...。陰キャラの俺が日向と。嬉しくないわけがない。そもそも日向が雨谷と同じ中学出身でずっと同じクラスだったということを知っていたこと自体が奇跡のようなものだ。雨夜は友達が少なくてクラスでも空気の方が存在感のある薄い存在で暗い性格で、根暗なオタクと陰口を囁かれていることを自身も知っている。そんな自分を空気とは無縁の日向が知っているなんて...。
初めて同じクラスになったとき雨夜は衝撃を受けた。クラス替えをして1日で日向はたくさんの人に囲まれていたのだ。同学年は見分けがつかなかったがどうやら他のクラスからもわざわざ訪れているようで今年は違うクラスになったとか、また別のクラスだとか話していた。それに加えて上履きの色が違う生徒もいた。上級生らしい彼らは諦めきれないのか部活の勧誘を熱心に行っていた。この頃から日向は一つの部活には所属せず、あらゆる運動部の助っ人として活躍していた。休日は毎週のように試合に参加し休んでいる日は1年に数日もなかったと記憶している。平日は平日で、その人懐っこい性格からマスコットのように扱われ、いるとやる気が出るからという理由でほぼ毎日どこかしらの部活に呼ばれていた。授業も始まってみれば毎日日向一色で。助っ人が忙しいという理由で生徒会に属することはなかったが生徒会役員が代わる代わる話を聞きに来たり、授業の質問を教師ではなく日向にしに来たり、教師はよく日向を指名して問題を解かせていた。休み時間は生徒たちの悩み相談に時間を費やす。くだらない些細なことから、勉強のこと、友達関係、恋愛関係、家族関係のことさえしてくるものもいたほどだった。そんな目まぐるしい生活の中で日向は絶対に笑顔を絶やさなかった。どんなことも二つ返事で請け負ってやりきって見せ結果を持ってきた。特に学園祭や体育祭は率先してクラスのみんなを引っ張って2年、3年(後で知ったことだが1年のときも成績はよかったらしい)と優秀な成績を収め、そのときのクラスの高揚感たるや今も鮮明に思い出せる。部活での活躍、クラスでの活躍、それだけでも日向はかっこいい存在だったが雨夜は彼を観察するうちに他人が全く知らない一面を何回も目撃していた。
日向は無類の猫好きだ。それは誰でも知っている常識だが、日向はよく帰り道で猫の世話をしていた。野良猫は友達のようだったし、迷い猫の飼い主探しは日常の一部と化していて怪我をした猫がいれば迷うことなく動物病院へ連れていく。しかし、その武勇伝にも似た物語を日向が周囲に話したことは一度もなかった。日向の中で猫を助けることは”当然のこと”であり、別段話題に挙げるほどのことでもなかったのだ。日向はまるで呼吸をするがごとく猫を助ける。雨夜はそんな日向の中にヒーローを感じていた。傷付いた猫に優しく手を伸ばす姿は目に焼きついて離れない。
そんな日向から、今友達と言われている。喜ばずにはいられなかった。憧れ続けた遠い人が画面のすぐ向こうで自分と会話をしているという事実が雨夜の心を暖かくした。
日向:質問です!雨夜はどんなものが好き?なんかちょっとアバウトすぎかな?(笑)
ヨル:そんなことないよ。俺は猫が好きかな
日向:猫!猫いいよな!俺も猫大好き!触るとちょっとひんやりした毛づやがたまらないんだよー!
日向:スリスリされるとニヤけちゃってさー(笑)かわいいよな猫!
日向:ニオイ付けられてるってのはわかるんだけどかわいくてさーついつい甘やかしちゃうんだよね!
雨夜自身も猫は割りと好きなのであながち嘘でもない答えを送れば案の定日向は食いついてきた。
「本当に猫好きなんだ...可愛いのは日向の方だろ」
日向の文面にニヤニヤしながら無難に答えれば日向は始終楽しそうだった。
日向:ところでなんだけど雨夜って黒猫好き?
唐突に日向のトーンが下がった。疑問符を浮かべながら好きだよ、と答えると短く、そう、とだけ返ってきた。
「...なんか日向の様子が可笑しいな。変なこと言っちゃったかな」
調子に乗って地雷を踏んでしまったかもしれない。冷や汗が垂れてきて雨夜は謝ろうと文字を打ち始めた。と、
日向:みんなには話したことないんだけど実は俺昔黒猫飼ってたんだよね
日向:子猫なんだけど車に引かれて大怪我しててさ急いで病院に連れていったんだ
ヨル:黒猫?
日向からの返信は怒りなどではなく単なる昔話のようだ。しかし笑える類いのものではない。日向を観察していてそんな情報を雨夜は知らない。日向を知ったのは中学に入ってからだし、恐らくは小学校の頃の話だろう。雨夜は既読という相づちを打ちながら話に耳を傾けた。日向の話はこうだ。
日向は小さい頃、学校帰りに車に跳ねられる子猫を見掛けた。あまりにも突然で当時の日向少年は動くことさえできなかったという。泣きそうになりながら駆け寄れば怪我をして今にも息絶えそうな黒い子猫がいた。その黒猫は後ろ足から夥しい赤黒い血を溢れさせ小さな身体で消え入りそうな呼吸をしていた。色で見えないだけで身体中を怪我しているのは幼い日向少年にも理解できた。日向少年は自分が血で汚れることも構わず、黒猫を胸に抱くと必死に走って病院を目指した。子供の足ではとても遠いそこを目指して日向少年はひたすら走り、途中で何回も躓きながら尚走ることを止めず日向少年は漸く病院に辿り着いた。
「猫が死んじゃう!猫を助けてあげて!!」
獣医による懸命な処置もあって黒猫は一命を取り止めた。自宅に連絡を付けてもらいやって来た母親と日向少年は処置中ずっと黒猫の心配をしていたという。
黒猫を引き取って日向少年は帰宅した。それから服も着替えず付きっきりで黒猫の世話をし、黒猫が目を覚ましたときは跳び跳ねて喜び急いで牛乳を皿に用意してやった。お腹を空かせているに違いないと思ったからだ。思った通り黒猫は少しずつ、本当に少しずつながら牛乳を飲みまた眠ったらしい。
そこから日向少年と黒猫の生活は始まった。学校に行っている間は不安で仕方なく授業も気が漫ろだったと日向は笑う。帰ってきたら一番に黒猫を見に自室に飛び込み休日は張り付くように世話をする。その甲斐あって黒猫はどんどん元気になり、初めは日向少年に警戒心を剥き出しにしていた黒猫も次第に心を緩しスリスリと頭を擦り付け甘えていたようで可愛かったと日向はしみじみと当時を語る。黒猫をすっかり気に入ってしまっていた日向少年は、何でも黒猫の言っていることが理解できるらしく日がな一日を黒猫と会話して過ごしていたと聞いて、そう言えば日向はよく野良猫と会話(?)していたなと思う。猫も返事(?)をしているようだったし存外会話は成立していたのかもしれない。
日向少年と黒猫がすっかり友達になった頃、別れは唐突にやって来た。
日向少年一家はその日どうしても家を一日空けなければならなかった。日向少年はそれを猛烈に嫌がった。まだ怪我は治りきっていない。一日も目を離すなんてとてもできないと両親には言ったそうだが、ついぞそれは受け入れられず、出掛け先の事情もあり黒猫は連れていけなかった。しかしそれがいけなかったのだ。翌日帰ってきた日向少年が目にしたのは、確かに閉めたはずの窓が不自然に開いた状態の部屋で、いるはずの黒猫はどこにもいなかった。家中探したけれどやっぱり黒猫はおらず、結局記憶違いで閉め忘れた窓から飛び出したという結論に至ったという。ただ、日向少年だけはそれに納得がいかなかった。窓は絶対に閉めた。怪我が治りきってはいないとは言え万が一黒猫が窓枠に飛び乗ったら落ちるかもしれないし、トイレや餌も十分に用意して部屋から出なくても済むようにした。それにもし外に出ると言ったって日向少年の部屋は2階だし、あの身体で2階から落ちて無事で済むような気がしない。扉だって開いていても他の部屋は両親が施錠していったのだから出られるわけないのだ。でもいなくなったのは事実だし、日向は今尚悔いている。自分が家を空けなかったらこんなことにならなかったかもしれないのに。そう思わない日はないという。それを懺悔するように日向は今、猫を助けているようだった。
日向:俺が思うのはその黒猫が立派な大人に成長してくれてればなって
日向:大人になったあの黒猫にもう一度会いたいよ
きっと日向は今悲しい顔をしているだろう。あの黒猫を思って泣きそうになっているに違いない。しかし雨夜は何もしてやれない。
ヨル:なんて言ったらいいかわからないけど大丈夫だよ。きっと生きてるさ。そんだけ怪我しても生きてたんだし、絶対大丈夫だって!
日向:ありがとう雨夜にそう言われると不思議とそう思えてくるよ名前が似てるからかな(笑)
ヨル:名前?そう言えば聞いてなかったね。何て名前なの?
日向:聞いて驚くなよ?名前は、夜って言うんだ
ヨル:え?俺と同じ?名前ってか俺の場合はあだ名だけど
日向:すごい偶然だよな!春海がヨルって呼んだときはびっくりしたよ!
ヨル:ホントにすごい偶然だなw運命感じたw
日向:そうなんだよしかもなんか雰囲気も似てる気がして
日向:なんて言われても困るよなごめん!
ヨル:そんなことないから!逆に嬉しいくらいだから!
日向:そうか?そう言ってもらえると助かるよとにかく変な話してごめん雨夜ってすっごい話しやすいのな!
ヨル:そうかな!?俺でよければ何でも話して!話ならいつでも聞くから!
日向:ありがとう!それならまた今度な
日向:母さんにいい加減に風呂入れって怒られちゃって(笑)
ヨル:わかった。俺も風呂入んないと!お休み日向
日向:雨夜もおやすみ!また明日!
そう返事が来たところで会話が終了する。スマホから顔を上げてゴロリとベッドに横たわる。ふうと息を吐いて漸く緊張から解放された。
「日向とたくさん話しちゃった...」
緊張感と高揚感と何より幸福感が雨夜を満たす。バクバクと心臓がうるさい。日向の、誰も知らない昔話を聞いて。秘密を共有した気持ちもまた嬉しくて仕方がない。初めて話してこんな秘密を自分だけが知っているなんて優越感に浸るなと言う方が酷な話だ。天子の強引なところはあまり得意ではないけれど今回ほど感謝したことない。
夢のような時間を過ごした雨夜は程よい眠気に襲われ風呂にも入らぬまま本当に夢の世界に旅立っていった。明日はどんなことを話そうかな、夢現に思いながら。
しかしその明日はやって来なかった。
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