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---- パンっ !!!!!
「谷地島ーっ!!頑張れ!!谷地島っっ!!!!」
本選は皆本気だった。
他の色だって、速かったし、谷地島も速かった。
……久我くんは、それでも一番速かった。
開始早々1位になった久我くんはそのまま後ろを離していく。
2位の谷地島でさえ、差が分かるほどに。
「負けんな!!谷地島!!」
いつもはボーッとしてて何も考えてないような表情の谷地島の、本当に真剣な顔。
負けたくないって、勝ちたいって、谷地島のその表情が訴えてた。
……谷地島…。
…だけど、現実はそんなに甘くない。
織部からの中3人は、多分凄く頑張って走ってくれたんだと思う。
青も断トツで早いのは彼方と久我くんだけで。
差は開きもしないし、縮まりもしない。
久夜にバトンが渡る頃には、1位と最下位のチーム差が半周以上もついていた。
青とは一定の差がついてて、頑張ってるけど、中々追い付けない。
青がアンカー前に渡る少し前に、彼方は動き出す。
俺の目の前に立った彼方は、あの日のように笑った。
「勝負だ、梁瀬。」
「……あぁ。」
青のアンカー前にバトンが渡り、久夜にもバトンが渡る。
久夜は部活対抗と同じくらい真剣で、それと同じくらいに早くて、青との差を縮めていく。
「…っすぅ………はぁああ、ー……すぅぅ………………」
大丈夫。いつも通り、練習通り。
せっかくのチャンス、楽しまなきゃ絶対損なんだ。
だから、大丈夫。
「氷野っ!!」
「梁瀬っっ!!!!」
前の走者が彼方の名前を呼ぶ。
その瞬間、隣にいた彼方はすぐに消えて、前に進んでいく。
それに続くように後ろから久夜の声も聞こえて、俺も走り出す。
全力で、全部出しきって、彼方に挑むんだ。
開いた差に、バトンが手についた瞬間握りしめる。
「梁瀬っ、走れーっっ!!!!」
久夜のその声に押されるように、彼方の後を追った。
はっ……はっ………はぁっ…………はっ、……………
はぁっ……はぁっ………っ…!…はぁっ、はっ…………
……もっと早く…!!早く…!!
追い付け、追い続けろ…
ずっと……、追いかけてた背中なんだ。
前を走る彼方の背中が遠い。
何年、追い続けてきたのだろう。
まだそんなに日も経ってないのに…こんなに差が開いてしまった。
カーブを周り、直線を走る。
彼方は、もうすぐにゴールテープを切るだろう。
それでも、俺はずっと追い続けたかった。
その背中を…、何度だって……
「っ……!!!!」
----パンっ パンっ !!!
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