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『彼方があんなに足速いとか知らなかった~反則だろ。』
その日から、彼方と梁瀬は2人でいることが多くなった。
相変わらず彼方の表情は乏しかったけれど、梁瀬はそれを気にしなかった。
季節は寒い冬を越えて、2人は小学校を卒業した。
地元の中学に進学した彼方と梁瀬。
特に彼方は新しい環境に不安ばかり抱いていた。
『サッカー部から勧誘されてたね。入るの?』
『んーそうだなぁ…どうしよ。彼方は?何か入る?』
『今のところは考えてない、かな…』
中学生になって、クラスも増えた。
奇跡的に同じクラスにはなれたけれど、梁瀬が部活に入ったら、また2人で話す時間も減ってしまう。
彼方にとっては、それが一番嫌なことだった。
元々人付き合いの苦手な彼方は、中学校から始まる部活に興味はなく、ただ梁瀬と過ごす時間ばかりを気にしていた。
昨日サッカー部からの勧誘にあったという梁瀬は机に寝そべりながら何かを考えてるかと思えば、急に何か思い付いたように机から身をのりだした。
『じゃあさ!!陸部は?よくね?彼方走るの好きだろ??』
『陸上部…?』
『多分、陸部ならリレーやらない限り個人プレーだろうしさ!なっ!?今日の見学行こーよ!!』
『う、うん……』
梁瀬の勢いに負け、彼方は陸上部の見学に行き、2人は陸上部に入部した。
それからは余計に2人でいる時間が増えた。
彼方にとっては嬉しいことであったし、梁瀬にとってもまた、楽しい日常だった。
そのまま3年間、変わらないはずだった。
3年目。2人は、最後の夏を迎えた。
変わっていったのは、梁瀬の方だった。
キラキラした光はいつの間にか消え、大人しい中学3年生になった。
元々足の速かった彼方は、練習し、その才能を開花させていった。
対象的に梁瀬は彼方との距離を感じていた。
最後の夏期大会は梁瀬にとって、陸上の最後の大会だった。
最後の大会で、梁瀬は翼を見た。
彼方の背に生えた、翼を。
その光景を、忘れたことなどなかった。
例えば、その後に待ち受けている運命が狂ったとしても。
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