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「あーー、今日も動いた動いた。」
「お疲れ様。部活楽しい?」
「んー、まだ入ったばっかやしなぁ、今日は楽しかったで。」
「それもそっか。」
部活も終わって、暗くなった頃に久夜と並んで帰る。
駅に向かう道は、バスケ部の先輩とか同級生も多ければ、サッカー部の人たちも多い。
やっぱり運動部の方が遅くまで残ってるらしくて、前からも後ろからも楽しそうな声が聞こえてきた。
「梁瀬は?楽しかった?」
「今日?あぁ。楽しかったよ。なんか今までとは違って面白かった。」
「そっか、良かったわ、それが聞けて。」
「なんで?」
「いや、だって誘ったの俺やん。梁瀬が無理してたらどーしよ、とかちょっと心配しとった。」
楽しいなら良かったわ、なんて言って笑う久夜に俺も笑う。
「誘ってくれてありがと。俺、今凄く楽しいよ。」
多分あのまま何の部活にも入ってなかったら、きっとこんな入学して1週間とかで楽しいとか思わなかったと思う。
最初は久夜の押しに負けて、だったけど今は純粋に自分からやりたいと思う。
今まで同級生がやってるのを遠くから見てるだけだったのを、こんな近くで見れるのことが嬉しくて、もっと役にたてればいいのに、ってそれしか考えなくなった。
「可愛いこと言ってくれるなぁ、梁瀬は。」
「るっせ!」
「口悪いん勿体ないよ、梁瀬顔いいんやから。絶対モテるで。」
「女子のいない学校で誰にモテるんだよ。」
「……それもそうやな。」
久夜と二人で笑って歩く帰り道に、もう慣れてしまった。
だけど、見える風景も、隣にいる人も、全然違うのに、俺の心の中にいる彼方が消えてくれない。
忘れたくても忘れられない、好きだった人。
俺は、どうすればいいんだろう。
今日だけじゃない、きっとこれからも彼方がきて、その度に俺は久夜にすがるのだろうか…
また久夜の心配そうな瞳に見つめられるのだろうか…
「梁瀬、余計なこと考えとると、電柱にぶつかるで。」
「ぶつかんねーよ。」
「分かんないやろ?ぶつかるかもしれへんで。」
……なんで余計なこと考えてるって分かったんだろう。
久夜にはやっぱり敵わない。
「梁瀬は真面目やからなぁ。」
「それ今関係ないだろ!それに絶対久夜の方が真面目だから!!」
「ははっ、そんなん自慢して言うことやないねん。威張ってもしゃーないよ。」
「……言い出したのはお前だろ!!」
「はいはい。落ち着けって、そんな怒ることないやん。」
「…………」
「やーなせっ、」
「バカ。」
こんなくだらないやり取りすら、笑えることが、今の俺には凄いことで。
奪わないでほしい。この時間を。隣にいる久夜を。
もう、あんな風に毎日怯える生活なんてしたくない。
楽しく、平凡に…ただ、生きていたいだけなんだ。
辛い思いなんて、しなくていいならしない方がいいに決まってる。
今の俺には、久夜がいてくれるから。
久夜とバスケ部があるから。
だから、その小さな楽しみを奪わないでほしい。
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